第四章、その8の1:示す道
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内政の政策が行われようとしている。腐敗と汚職が続いている憲兵団を監視し、改善しようとする組織を作るのだ。宮廷の者達が組織を管轄するのではなく、完全な第三者が上に立って陣頭を取るらしい。大きな挑戦だと思うがそこが付け入る隙だ。
私の仲間はその組織の人員に組み込まれていてな、組織成立を機として王都の至る所で反旗を翻す事となっている。重要拠点を即座に制圧して要人を殺害、そして王位を奪い宮廷の全てを手中に収める。混乱が発生する王都に私が帰還、狂王の力で民草を隷属させ、国は統一されるのだ」
「盛大な計画だな。何時やる予定なんだ?」
「組織が成立次第、としかいいようが無い。それまでは皆に、忠実な王国の犬として活躍してもらうよ」
どうやら蜂起を試みようとしているらしいとアダンは理解するが、頭の中ではその成功をすぐに否定する。王都の連中はチェスターが思っている以上に頑強な者が多いと、アダンは自分自身の肉体によって知っているのだ。胸を蹴り付けたあの熊のような大男のような連中が、チェスターの御仲間をすぐに排除する事だろう。
ふとアダンが正面を見ると、遠方から一団が歩いてくるのが見えた。群れの大きさを見た後、「おそらく」と前置きしながらアダンは言う。
「・・・討伐隊の連中だな、あれは。漸く帰って来たらしい」
「ふん。帰ってきた所で、家族が生きているかどうかなど分からないのだがな。蛮族、心配ならもっと足を動かしたらどうだ」
チェスターの言葉から二時間後、双方は緩い坂の頂上ですれ違った。片や悠々自適と進む一団。片や疲労困憊の様子で懸命に歩を進ませる一団。森に帰還した所で大した戦力にはならないだろうと、チェスターは彼らに聞こえぬ距離まで進んだ所で侮蔑の笑みを零した。
一団と擦れ違って二日程経った後の事である。山肌を覆っていた白い雲がすっと晴れていた。天気の悪戯によるものだろう、白の峰は冬であるにもかかわらず夏の日差しのような輝きを、積雪の肌に生じさせていた。宛ら西に輝く朝日といったところであろう。連続する山の頂上に掛かる薄雲が見事な冠となっており、思わずチェスターとアダンは感嘆の息を呑みこんだ。
「素晴らしい・・・」「おぉ・・・見事な山だな」
徐々に近づいていく霊峰の偉大さに、アダンは思わず及び腰となってしまった。彼の故郷にある険しい山々を思い出したのだ。
「・・・こいつを、本当に登る気か?」
「当然だ。遺跡は山の谷間にあると書物に書いてあったのだぞ。なら何時登る?」
「春先でいいだろ・・・」「他の者共に出し抜かれるかもしれんのだぞ!まだ遺跡は手付かずの筈なのだからな!」
こんな場所を好き好んで登るやつ等いない。原住民だって住んでいるのかどうか怪しい場所なのだから。
アダンの思いを他所に、チェスターは期待に
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