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王道を走れば:幻想にて
第四章、その8の1:示す道
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あり、後に続くのは大柄なドワーフであるアダンであった。 
 森を出たのは数日前の事であった。数か月もの間滞在した森を名残惜しむような感情を二人は抱いていない。寧ろアダンの方は同情すら窺える色を瞳に宿して、森を振り返っていた。

「あーあ。盗賊の群れと睨めっこたぁ、エルフもついてないねぇ」

 今頃森の入口ではなけなしの兵士が集わされて厳重な警戒態勢を敷いている筈であった。数でいえば二倍にも匹敵する盗賊が相手なのだから当然といえば当然の処置である。が、その分冬を控えて溜め込んでいた食料を余分に消費する事となるのが不幸といえよう。
 冬越しの出来ぬ者が餓死するかもしれない。そんな悲惨な民族を振り返るアダンに向かって、チェスターは冷たく言う。彼らが顔を向けるべきなのは、あくまで西の方角なのだから。

「どの道見捨てる連中だったのだぞ。一々振り返るな。前に進め」
「はいよ。というかあいつら、本当に道の安全を確保したんだろうな?まさか横合いからいきなり変なのが飛び出してくるとかは止めて欲しいんだけどよ」
「そこまでの不手際があったのならば、通りすがりの村に火でも放っておこう。僻地の野蛮人が死ぬだけだ、我等にとって痛くも痒くもない」
「冬にやる発想じゃねぇよなぁ、それ」

 人以外の種族ならば途端に冷酷になる辺り、チェスターという若者は人の業というものを体現しているかもしれないとアダンは感じる。彼はチェスターの言葉から、気になる事を問う。

「なぁ、今お前が言った『我等』ってのは誰を差すんだよ。俺も含んでいるのかい?」
「貴殿ではないぞ、アダン殿。私と、私と理想を同じくする有志達の事だ。何も私だけが単独で動いているわけではないのだ」
「あ、そうだったの。てっきり一人で死にたがっているかと思ってたんだが」

 ふんと忌々しげに鼻を鳴らしてチェスターは正面を見据える。白く大きな雲が掛かった白の峰が、遠くに聳え立っていた。
 二人が目指しているのはエルフ領、いや大陸屈指の霊峰ともいえる山脈である。まして冬に向かうとなれば山風は一層冷たくなり気温も極端に低くなり、獰猛なラプトルが獲物を求めて山肌を徘徊する。鍛え抜かれた冒険家でも思わず弱音を吐き、時には死に至ってしまう世界となるのだ。そんな山へと進もうとしているのはただの思い付きによるものでは無い。手にした者に究極の力を与える、狂王の秘宝のためであった。

「狂王の三つの秘宝を独占すれば、私はこの世のすべての魔術士を凌駕するほどの力を得る。そうすれば弱体の一途を辿る王国に改革の息吹を齎す事が出来るのだぞ。何にも勝る強力な魔術国家を形成し、嘗ての隆盛を取り戻す。これが私の理想だ」
「へぇ。んでお前が秘宝のために遺跡に向かっている間、御仲間達はどこで何をするんだ?」
「今、王都の方では
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