第四章、その8の1:示す道
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気遣いが出来ないのが駄目な点といえよう。
輿がぐいと弟子らの肩に担がれて、進んでいく。人間でいえば走りに等しいほどの速さであるが、肉体を魔術で強化されている弟子らは一々態勢を崩す事は無く、ともすればハンモック程の快適さであった。起伏のある場所も這うように広がる樹木の根っこも、大した障害にはならない。輿は悠々と獣道を進んでいく。
「ああ、愉しみだなぁ。あそこにあるとはなぁ。予想通りかもしれんが、しかし嬉しい事には変わりがない」
にたりと気色の悪い笑みをマティウスは浮かべる。正気があるとは思えぬ顔立ちと相まって彼の不気味さを際立たせた。頬杖を突きながら、彼は北方の冷たい空を仰ぎ見た。
「秘宝は私のものだ・・・待っているのだぞ、狂王」
輿は普通ではない速さを保ったまま北へと向かっていく。樹冠によるカーテンが途切れると、マティウスの視界には雄大に聳え立つエルフ領の霊峰、白の峰の遠景が望めた。目的の代物はあの山脈の谷間にあるのだ。過去の遺物と化した偉大なる王の遺跡、『ヴォレンド遺跡』にこそ存在するのだ。
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