番外編
青騎士伝説 前編
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り札にして、生命線。
(……大分傷んでいるッスね。また修繕をしてもらわないと……)
彼の相棒であり、『冒険合奏団』の戦利品の一つでもある、長槍。
その槍を見ながら、彼は人知れず目を細めた。
◆
狩りは、昼休憩を挟んで夕方まで問題無く続いた。朝こそ何度か話し掛けられたものの、自分が全く反応しないと分かってからは三人だけで姦しく話をし続けていた。それでもナガツキだけは夕方まで自分のマントを引っ張り続けて、何か言いたげにしていたのだが。
だが、反応しない。しないように、なっている。
(「『青騎士』は、喋らない。戦闘会話以外には、頷きさえしない」、からッス)
ファーは忠実すぎるほどに、『青騎士』となる為に書かれたメモを守る。中学時代は真面目なくせに成績不良で有名だった彼が、その文章を一言一句丸暗記するほどに見続けたその文章は、ファーの脳に直接インプットされたようにその行動を制御している。だから、
「あ、あの、その、」
狩りが終わり、主街区までの帰り道で、再び話し掛けられた時も、そうした。
「ねえ、『青騎士』サン? やっぱり、私達と一緒にならない? 相性ばっちりだったじゃん?」
「狩りもぉ〜、快適だったよぉ〜」
「ちょ、ふ、二人ともっ!?」
声をかけてきたナガツキを庇うように、或いは支える様に左右に立った二人が更に追い打ちをかけるように口を開く。が、その声が聞こえても、ファーがその声に反応を示すことは無かった。その無反応は既に彼の脳裏に染みついており、彼の言動はおろか思考にすら動きを及ぼさない。
応答を求める言葉には、反応しない。
それが彼の…彼らの決めた、『青騎士』のルール。
何秒たったか。五秒か、十秒か。或いはそれは数分に及んだか。
口を開いたのは、ナガツキだった。
さっきまでの困ったような顔を変えて、はにかんだような、諦めたような、弱弱しい笑みで。
「あ、あの、今日は、ありがとうございました。私達ばっかり助けて貰って、大していいアイテムもドロップしなくて、『青騎士』さんの役には何にも立たなくて……。でも今日は、すごく楽しかったです。お金が貯まったら、またお願いしますね。……じゃあ、また」
笑って、身を翻した。
そんな彼女を見て、残りの二人も困ったように顔を見合わせて、ぺこりと礼をして去って行った。
その動作にも、反応はしなかった。
反応せず、見続けた。三人が、街へと……《圏内》へと入るその瞬間まで。
そして。
(……「役には何も立たなくて」?……立ったッスよ、十分)
ゆっくりと、振り返る。
シドには劣るが、あれから鍛えた《索敵》スキルは、辺りの犯罪者達を十分に捕えてい
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