番外編
青騎士伝説 前編
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る。手間のかかる割に威力の低い技で、本来は対人戦にて相手を無力化するだけの技。
「ありがと、『青騎士』!」
「やぁ〜んラクシょ〜」
「えいっ、やあっ!」
長槍、《ミスティルティン》に張り付けられてもがく巨猿に三人が順番にソードスキルで斬りかかる。滑らかな連携でそのHPを三割ずつ綺麗に削られた巨猿がポリゴン片へと代わり少女たちが歓声をあげたが、その時にはもうファーは別の標的へと向かって歩き出していた。
槍は相手に突き刺したままで、なんの武器も持たずに。
「……」
だが、そこに恐怖は無い。
これも、いつもと言えばいつものことだから。
襲いかかる仔猿が三匹、その番犬なのか大きな豹のようなヤマネコが二匹。どれもこれもレベルは五十の後半、なんの問題も無い。先頭を切って後ろの三人へと向かおうとする仔猿の構えた尖った骨を、突き出した右手で遮る。その動きに加えて発動させた壁戦士の挑発スキルで憎悪値を煽り、残りの四体を纏めて自分に殺到させる。
その牙が、爪が、武器が自分に突き立てられ、
「うおぉーすごぉーい」
「かっこいぃ〜」
「あ、『青騎士』さん!」
一様に弾き返された。
当然だ、とファーは思う。この《シアン・メイル》の防御力は、半端では無いのだ。こんな中層エリアの雑魚モンスター、ダメージが通るはずがない。リズベットの腕は、そんなものではない。それは骨の短剣を抑えた籠手も、牙に咥えられた具足も、同様だ。
愚かしくなおも躍起になって攻撃を加えるMob達が、左右から跳ね飛ばされた。ハヅキとウヅキだ。ハヅキの両手剣と、ウヅキの片手剣。威力は違えど突進系のソードスキルは流石の威力で小柄な猿達を一体ずつ跳ね飛ばす。
「やあっ!」
そして最後に、一拍遅れての気合いは、ナガツキ。小柄な体に似合わない巨大なハルバードの弧を描く軌道が、残りの三匹を纏めて薙ぎ払った。かなりダメージを負った敵は一旦体勢を整え、攻撃を加えた三人に狙いを変更する。
(……ここからは、また三人の戦いッス)
SAOは、敵に与えたダメージ量によって経験値量が分配される。ファーが本気を出してMobを狩ろうと思えば、彼一人でも少女ら三人纏めた分よりはるかに効率よく敵を倒せるだろうが、それでは彼女らに経験値が入らない。故に『青騎士』のような傭兵は、基本的に危なくなるまで手を出さないのがセオリーだ。
(……危なげは、ないッスね)
確認したあと、ゆっくりとした歩みで槍を取りに行く。青白い燐光を纏う刃先を持った、木柄の両手用長槍。彼自身の身長すらも超えるだろうその長柄には、禍々しい二本の蔦が捲き付く様な形をしている。『宿木の長槍』。『青騎士』の切
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