番外編
青騎士伝説 前編
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騎士を討ち取る』。それこそが、最凶最悪ギルドの証」。
オレンジギルドは、こぞって彼を狙った。
いや、「狙わされた」、「狙うように仕向けられた」というべきかもしれない。
『青騎士』がしていたのは、自分自身を餌とした「オレンジへの罠」だったのだから。
結果。ひと月で夥しい数の投獄者が生じた。
その影に、相当の死者がいたに違いないという憶測は、当然のものだった。
◆
もう、何日寝ていないのか。まともに寝ていない、という点で言うのであれば既に二カ月が経っていることになるのだろう。だが、それでも辞める訳にはいかない。夜のレベル上げの為のMob狩りも、昼間のコル稼ぎの為の傭兵業も。
自分がそれほどの力を持っていないことは、分かっていた。
あの頃から、いつだって自分は足手まといだった。自分の防御が完璧であれば、皆はもっとそれぞれ自分の役割のみに集中できていたはずなのだ。シドも、レミも、そしてソラも、いつだって自分を気にかけ、自分のフォローを忘れなかった。
それは今だってそうだ。
『青騎士』を演じれば演じるほど、自分の弱さを感じてしまう。
シドとソラの、凄まじい戦闘センスは、あまりにも自分とはかけ離れていた。
この『青騎士』の装備一式は、獲得したアイテムの組み合わせ表と共に『冒険合奏団』の倉庫に保管されていたものをそのまま使っていた。喋らない、例えHPが危険域でも余裕を失くさず動揺を悟られない、といった注意書きも、それに従っている。
恐らくシドが書いたのだろうそれは、まるで未来予知のような効果を及ぼした。
喋らないのは、自分の弱気な口調を隠してくれた。
動揺を隠す振る舞いは、『青騎士』をまるで亡霊のように錯覚させ、オレンジすら恐怖させた。
その不気味な態度は、一般プレイヤーには「寡黙でクールな『青騎士』」と受け入れられた。
その全てがシドの……『冒険合奏団』の筋書き通りだと考えると、彼らはまるで神か何かなのではないかと疑いたくなる。自分が考えもつかないことを考え、その効果を最大限に生かす。そんな彼らは、やはり何処までも天の上の存在だったと思い知らされる。
そして、そんな「『冒険合奏団』の作り上げた『青騎士』」と、「自分の入った『青騎士』」の乖離は、ますます自分の焦りを加速させ、ときに困惑させることもあった。
◆
「あ、『青騎士』さん、きょ、今日は、」
「よろしくお願いします!」
「頼むよぉ〜」
眠たげな頭で、困惑する思考を整理する。
自分は確か、朝の八時半にこの第五十七層主街区、《マーテン》の転移門前に来て、いつものように立ったまま地面に槍を突き立てた。この姿勢は周囲からは「寡黙な不動の佇まい」と
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