番外編
青騎士伝説 前編
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使うため、「あれは軍の秘密兵器だ」という勘違いもあり、「軍がとうとう治安維持のために本気になった」と噂されてこちらに損は無い……というか、得ばかりだ。一応《牢獄結晶》とここまでの往復用の《回廊結晶》は格安で譲っているが、それも彼の働きからすれば微々たるものに過ぎない。
そんなことを考えていたら、シンカーは無意識に唇を噛んでいた。
「……では、お任せしておきます。…よろしくお願いしますね」
「はい」
一言だけ頷いて、彼は立ち上がる。再び身に纏う豪奢な全身鎧、《シアン・メイル》は、所々に真新しい傷跡がついてはいるが、まだ十分に耐久度を保っているようだった。そういえばたしか鎧は昨日知り合いの鍛冶屋に修繕してもらったと言っていたか。そして鎧を纏うということは、寝床に戻るわけではないだろう。これから、レベル上げに向かうのか。或いは、夜の分の『狩り』か。
「―――」
再びの無言を取り戻した騎士は、ガシャンと音を立てて歩き始める。武器の修繕に向かうときはこのシンカーの執務室から直接『リンダース』まで飛ぶのだが、今日は歩いて街の転移門までいくようだ。さっきまでの困憊した様子が嘘のようにしっかりした足取りで進む彼に、
「……気を付けて、くださいね……」
呟くようにしか、シンカーは声をかけられなかった。
◆
アインクラッドの歴史に残るであろう最悪の集団対人戦闘、『ラフコフ討伐戦』。
その夏の深夜の、血みどろの死闘によってあの殺人者ギルドは壊滅した。
だが、それによって全ての犯罪者プレイヤーが同様に剣の力にて制裁を受けることを恐れて大人しくなったかというと、そんなことは無かった。寧ろ『笑う棺桶』という絶対のトップが消滅したせいで、他のオレンジギルド達がこぞってその座を狙い始めたのだ。
『アインクラッド最凶最悪のギルド』の、負の称号を。
罠、恐喝、強盗、殺人。
オレンジギルド達がまるで競うように凶行に走りだしたときに、『青騎士』は現れた。
幾つかの根城の割れたオレンジギルドを壊滅へと追い込んだ後にその男が始めたのは、「傭兵」だった。朝方、人の気の多い階層に唐突に表れてメッセージウィンドウを表示、そのまま無言で勧誘を待ち続ける……というか、仁王立ちのまま佇むのだ。
知る人ぞ知るオレンジギルドハンター、『青騎士』。そのネームバリューを得ての傭兵業は、かなり順調に進んだ。ひと月が立つ頃には、「共に行動したパーティー達が、オレンジプレイヤーの襲撃があった場合も含めて一人のHPも赤の危険域に落ちない」と評判の腕利きとなった。
傭兵の依頼は、先を争って増えて。
騎士の名声が高まるにつれて、その首に懸けられた『負の名声』も増えた。
「『青
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