番外編
青騎士伝説 前編
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ていた、「名前詐称アイテム」が実在することの証明でもあったが、青騎士の不可解な現象はそれだけでは無かった。
死なないのだ。
それは噂を聞いた犯罪者プレイヤー達の一ギルド……十人を超えるそのメンバーが張った罠に青騎士が陥った時のことだった。なかなかに名の知れた彼は、中層レベルではかなり上のレベルを持つ実力者であり、罠にかけて取り囲んだ青騎士に一斉に襲いかかった。無慈悲な一体多数。巧みなスイッチで回復の隙を与えず、毒や麻痺を立て続けに放った。
そして、一時間。
騎士は、全く怯むことなく、戦い続けた。
何故か効かない毒。
何故か表示されないHP。
違和感が不信感に、そして恐怖に変わり、戦線は崩壊。
圧倒的有利だったはずのギルドの数人が牢獄送りになって、その名は不動のものとなった。
その不死身の体で犯罪者を狩る、青の暴力。
『青の亡霊騎士』。
◆
その日、三人の犯罪者プレイヤーが立て続けに牢獄に送られるにあたって、シンカーは確信していた。「ああ、また彼(・)がやったのか」と。送られてきた面々は、中層フロアではそれなりに名の知られているオレンジギルド、『秩序の破壊者』のメンバーだったこともあるし、何より彼らの尋常ではない怯え方が、そのことを確信させた。
(で、あるなら……きっと来ますね。《牢獄結晶》をまた仕入れに)
待つのは、ほんの数分に過ぎなかった。
予想通り、彼はやってきた。
「シンカー、彼をお連れしました」
「ご苦労様です、ユリエール。申し訳ありませんが、下がっていてください」
「了解しました」
付き添いは副官、ユリエール。彼女の後ろについて来たのは彼の予想通りの、大きな青い影。
「お掛けください、青騎士君。……お疲れ様でしたね」
「………」
鎧を解除することなく、ガシャン、と音を立てて『青騎士』はソファに腰かけた。その間、一切口を開いていない。聞いたところによれば、彼は軍の本拠地たるこの『黒鉄宮』内で……いや、他の場所でも一切声を出すことが無いらしい。
ユリエールがゆっくりとドアを閉め、そのまま数秒。防音効果が発動したのを確認して、
「……もう、いいですよ。……ファー君」
「……はい……」
やっと彼は鎧を解除し、口を開いた。
『冒険合奏団』の腕利きの壁戦士、ファー。『青騎士』の正体であり、不死身の亡霊と謳われる男だが、こうして俯いて項垂れている姿を見るととてもそうは思えない。全身鎧である《シアン・メイル》の解除によって体は軽くなっているはずなのに、
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