番外編
青騎士伝説 前編
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れはまるでこのSAOが始まった頃のアタシやアスナ……いや、それよりも上だろう。それを癒せるのは、きっと私じゃないのだ。
キリトのような、ソラのような、選ばれた人間達。
(……はぁー)
もう一つ、内心で溜め息をつく。脳裏に浮かぶのは、二人の姿。つい先日、「結婚報告」に来たばかりの、黒と白の、二人の若者。全く、確かに今回は負けを認めたものの、こんな報告を堂々としに来るとは。まあ、しに来なければ来ないで許せないが。
そんなことを思っていたせいだろうか。
「まったく、しょうがないんだから……」
一区切りついたところでふらりと立ち上がり、俯いたままピクリとも動かないファーへと近づく。まったく無反応のところをみるに、どうやら眠っているようだ。その、短い金色の髪を、そっと撫でる。キリトみたいに馬鹿で、アスナみたいに真っ直ぐで、レミみたいに不器用で、……ソラみたいに理想を語って。
思えば彼は、きっと一番『冒険合奏団』の影響で変質したのは、彼だったのだ。
レミやソラは、どこに行っても彼女ららしくあったのだろう。それは確固たる個性の証とも言えるし、もう性格が固まってしまった、成長の限界だとも言える。そんな彼女らは、きっとどんなことがあったとしてもそのままだったのだろう。
その点彼は違う。彼は、変質した。もし別の場所にいたら、もっと別の彼になったはず。『軍』にいたら『軍』の色に染まっただろうし、もしオレンジギルドにいたらオレンジギルドの色に染まったのだろう。そして彼は、何の偶然か或いは奇跡か、『冒険合奏団』というリズの知る限り最高のギルドに育てられた。
(あの頃のコイツは、もっと……うーん、犬っぽかった、かな?)
ひとしきり撫でた後、何故か満足したので思考を中断する。うーん、人恋しかったのかな? キリトとアスナをみて、ちょっとうらやましかったのだろうか? これは浮気になるのか?いやいや、今考え
ることではないか。だってこいつ、ワンコだし。
苦笑して、再び作業に戻る。
まあ、なかなかに気分が良かったことは認めよう。だから。
(……その分のお礼は、この修繕を完璧にすることかしらね)
ちょっとだけ笑って、またアタシは作業に戻るのだった。
◆
しかし、彼女の想いは、果たされなかった。
届いた一通のメッセージに、ファーが修繕もままならない鎧をて再び出撃したからだ。
―――『青騎士』へ
第五十五層、『結界の丘』にて待つ
来なければハヅキ、ウヅキ、ナガツキ三人の命は無い
殺人者ギルド 《墓荒しの蝙蝠》―――
簡潔過ぎるそのメッセージに、彼は再び、『青の亡霊騎士』と化した。
その姿は罪無き
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