番外編
青騎士伝説 前編
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た。
(……こうして、またエモノが釣れたんスから)
翻ったその騎士の面の向こうに、先程までの思考の停まった面影は無かった。
あるのは敵意。害意。そして、爛々と輝く、戦意。
騎士の歩みは、それだけで背後に隠れて自分の首を狙っていたオレンジプレイヤー達を茂みから引き摺りだした。慌てて武器を構える者、距離をとって辺りを覗う者、先んじて《投剣》スキルで先制してくる者。そんな彼らの数人が『牢獄』へと送られ、残りの面々に恐怖を刻みこむのに、五分とかかりはしなかった。
◆
窓の外のけたたましい雨音を聞きながら、
「んで、アンタここまで武器やっちまったワケ? 相手何人いたのよ?」
「……六人、ス……」
リズベットは大袈裟に溜め息をついた。目の前で丸椅子に腰かけるのは、ファー。彼の装備品は異常なほどに多く、そのほぼすべてが彼女の手によるプレイヤーメイド品だ。青い輝きを纏う本来は豪奢で美しい全身鎧の一式全てがかなり耐久度を削られており、目に見えて傷だらけだ。同時に出された長槍も、刃の部分がかなり消耗しており、このまま使えば二日と持たないだろう。
「……はぁー。全く、お金は払ってるからいいけどさ」
「……はい……」
溜め息をつきたくもなろう。彼の装備一式を翌日までに修繕し直そうと思えば、一晩丸々かかることは想像に難くない。このしんどい依頼が、一週間と間を置かずに来ているのだ。もう十一月。この生活が始まって三カ月だ。
(アタシも意外と、やれば出来るわねえ……)
この暮らしがはじまったすぐの頃は、到底一ヶ月持たないだろうと思っていた。しかし、自分の体は思った以上に頑丈にできているらしくその三倍の期日を超えてなおとりあえずはちゃんと動き続けている。全く、これなら受験勉強も心配なく徹夜で頑張れそうだ。
頑張れそうにないのは、
「……アンタ、ちゃんと寝てんの?」
「……」
この男の方だ。
ギルドにいた頃から、嘘の付けない男だった。疲れ切った眼光に、おぼろげな視線。姿勢は泣きだす寸前の子供の様に俯いて、項垂れている。うーん、分かりやす過ぎる。明らかにアタシよりも重症だ。しかしこの男は、まさにこんな姿だった三か月前から、日々死闘を繰り広げ続けているのだから、正直信じられない。
「はぁー。死なない程度にしときなさいよ……」
それだけ言って、修繕に取りかかる。普段は自分の作品達、一つ一つを大切に扱うのだが、こんな雑念まみれではとても集中できそうにないが、染みついた作業は体が勝手にこなしてくれていた。
頭の中ではいろいろと考えていたが、あたしの口はそれ以上は、何も言わなかった。この男の心が、もう大分擦り減っていることを知っていたから。そ
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