番外編
青騎士伝説 前編
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い彼らだ。驚き、慌て、狼狽している。皆一様に周囲の面々の顔を落ち着きなく覗う。そして、
(あの人は……?)
目線を動かした、その先。円の中心に佇む、一人のプレイヤー。
その姿を一言で表すならそれは、『騎士』。全身を青く輝く豪奢な鎧で包み、背中には紫のマント。手足も同色の金属防具に隙間なく覆われており、携えているのは独特な木柄をもつ両手用の長槍。頭すらもすっぽりと兜に覆われ、数本の縦スリットの入っただけの面からはその顔や表情を覗うことは出来ない。しかし。
(……こ、怖い……)
その佇みに、言いようのない恐怖を、シリカは感じていた。
確かにその姿は、それ自体が異様だった。所々の打撃痕は恐らく鎧に相性の良い打撃武器での攻撃を受けたのだろう。鎧の隙間にささった短剣は《鎧通し》のスキルで突き立てられたもの。現実だったら満身創痍どころか生きているのが不思議な、まさに倒れる寸前といった風貌。
だが。
―――ガシャン。
シリカを恐れさせたのは、そんなうわべなものでは無かった。キリトのような得体のしれなさとは違う、明確な敵意と害意。青い騎士はカーソルの色こそグリーンだが、その無言の歩みは周囲のオレンジプレイヤー達よりもはるかに強い恐怖をシリカに呼び起こさせた。青のスリットの奥、見えるはずのない瞳が殺意に光るのを、シリカは見た気がした。
―――ガシャン。
その歩みは、流石に重装甲だけあって速くは無い。しかし、周りのオレンジはその歩みに気押された様に、じりじりと後退していく。その後ずさりはまだ迷いがあるのか、武器を構えたまま下がるオレンジ達よりも騎士の歩みの方が速い。そして、数秒。
騎士の歩みが止まって。
ガシャっ、という音が響き、同時に一人の男が悲鳴を上げた。
騎士の両手が凄まじいスピードで閃き、長槍が突き出されたのだ。
「う、うわあああ!!!」
血の様な深紅のライトエフェクトを纏って繰り出された長槍が、その倍以上の距離を一瞬で貫いて一人のオレンジを貫く。だが、青い騎士の攻撃はそこで終わらなかった。赤い光を保ったままに槍は高々と掲げられて一回転、そのまま深々と地面に突き立てられる。
勿論、敵を貫いたまま。
「ひ、ひぃっ!!!」
磔にするように突き立てられた槍を抜こうと、驚愕に顔を歪めた男がもがく。しかし槍は相当な力で刺さったらしく一向に抜ける気配は無い。色濃い恐怖の表情を浮かべる男を睥睨しながら、騎士は悠々とマントの下からアイテムを取りだした。あまり馴染みのない、黒褐色の結晶は、《牢獄結晶》。シリカも詳しくは知らないが、とりあえず言えるのは「犯罪者プレイヤーを牢獄に強制的に送る」というアイテムだ
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