番外編
再びの『合奏』を求めて
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っていると人は来るものだ。初見常連問わずにそこそこに買って行ってくれるから、基本的に期待しているくらいの商品数はだいたいはけてしまうし、その場でデザインが気に入ったお客さんやギルドがオーダーメイドを依頼してくることもある。
まあ、スキル熟練度とレベル、そしてお金を稼ぎ、日々を楽しむのは、これで十分だ。
それに加えて、私には日々を楽しませてくれる、とびっきりの常連が居るのだから。
◆
――― ……え〜…………あ〜ん…… ―――
その声は、転移門のほうから聞こえてきた。
(……今日は、いつもより遅かった)
時刻は既に夕暮れが迫りつつあり、店には宿に帰ってきた昼型プレイヤーの数人。皆、それなりに楽しそうにアクセサリーの数々を眺めていた。一応次回用の注文も幾つか受けたし、予定数は十分に売れていた。これなら次回に向けての仕入れも作製も困ることはないだろう。今なら、彼(・)が来ても、特に問題は無いか。
―――るぇえぇ〜みたぁあ〜ん……―――
ふむ。それにしてもいつもいつも、よく自分のいる場所が分かるものだ。《追跡》スキル持ったストーカーなのかと疑ったこともあるが、昔に一度シドの《索敵》で見て貰っても見つからなかったから、恐らく午後になったら各層を虱潰しに探しているのだろう。
繰り返しになるが、凄い馬鹿だ。
奇妙な……いや、キモい体の動きで走ってくる男に思う。
「るぇえ〜みたぁ〜ん、久しぶりぃ〜!」
「……ん、三日ぶり、ウッドロン」
独特の良く分からんステップを踏んで、ビシッ、と効果音がしそうな勢いでポーズを決めるこの長髪の馬鹿が、ウッドロン。凄い馬鹿であり同時にまごうこと無き変態だが、別に悪い馬鹿では無い上に私の店の最も由緒ある常連の一人でもあるプレイヤーだ。
「ぅぁ会いたかったよぉおぉ〜! もぉう三日だよぉ〜! さびしかった〜!」
「……私は、そうでもない」
「ぐはっ!? でもそんなレミたんも好きだ〜!」
いや、だからといって対応がいいわけではない。
こんな馬鹿のお手本のような馬鹿に、ニコニコしてやる義理はない。
ちなみに彼との交流は、実はけっこう古い。《木工職人》である彼は、ソラがギルドを立ち上げたころから、どこからともなく現れて家具一式を売っていったのが最初の出会いになる。それ以来、服装に拘るレミはその木工細工を依頼したことがあり、その交流は今でも続いていた。
ちなみにこの段階で周りにいた客たちは一様にドン引きだが、その視線は私は結構平気だ。元の世界は立派なオタク女子大生だったのだ。こんな視線にやられるような精神力では大学構内で同人誌など読めはしない。なおもいろいろと「好きだ」だの「愛してる」だの「もっと罵って」だの
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