暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン 〜無刀の冒険者〜
番外編
再びの『合奏』を求めて
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っほー!」「久しぶりー!」

 二十七層主街区、『ロンバール』。なかなかに静かな空気の漂う、通称『常闇の街』。中層ボリュームゾーンより随分下の寂れた街だが、この独特の……自分の感覚では、古びて埃被った本棚の並ぶ図書館の様な……空気が好きで、ここに住む、或いはギルドを構えるプレイヤーも居る。今回の依頼人は、そういったギルドの一つだ。

 「……納品」
 「はーい、ありがとねー、レミさん!」

 訪れたそこそこに広い一戸建てのギルドホームから顔を出した女性は、ギルド『スター・ダスターズ』のリーダーであり、依頼主だ。納品する品は、ギルドのカラーの宝玉をあしらった、革製手袋七揃い。周囲は裁縫でギルドのエンブレムも刻んである。

 このテのデザインと性能を両立させた装備を意図的に作るには、《裁縫》と《細工師》を共に上げている必要があるため、なかなかな高級品だ。だから自分の商売相手は、いわゆる「お金持ち」になる。このギルドもこんな辺鄙なところにギルドホームを構えてはいるが、中層フロアではそれなりに名前の通ったギルドである。女プレイヤーが多く、おしゃれに気を使うくらいの余裕があってこその注文品、というわけだ。自分もそのあたりを考慮し、スキルを如何無く発揮して仕上げてある。

 「わお! やっぱりレミさんに頼んで正解だわ! いいカンジじゃない!」
 「……」

 大袈裟に褒めてくれる相手に、無表情のまま、コクリと頷く。褒めているのかお世辞なのかは分からないが、とりあえずトレードウィンドウに示された金額は文句のつけようのない額だ。有難く頂戴して、またペコリ。

 (これで、またギルドの貯金は増やせるし、ブーメランも買い足せる……)

 無表情の奥ではそんなことを思いながら、さっそく手袋の付け心地を試すメンバーを見守る。自分の作品をよろこんでもらえるのは、表情に出なくてもやっぱり嬉しい。

 だが、一通りはしゃいだ後のギルドリーダーからの「お茶でもどう?」という誘いは、断った。正直、話すのは苦手なので、あまり面識のないメンツといても会話が持たないのだ。

 「えー。今日はなんか用事あるのー?」

 一応社交辞令的に聞いてくる相手に、とりあえず。

 「……街で、出店。よかったら、来て」

 こちらも社交辞令的に、言葉を返しておいた。





 まだ日は高いはずだが、一日中薄闇に覆われているこの街、ロンバールではそれは関係ない。だがまあ、足をとめた広場は手元が見えるくらいの光量は確保されており、裁縫スキルをするくらいには問題なさそうだった。

 「……ん、おけー」

 ばさりと広げるのは、簡易的なプレイヤーショップ……露天商というか、フリーマーケットを作るための絨毯の様な広い布。名称、《ベンダーズ・カ
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