番外編
再びの『合奏』を求めて
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食中だったのか。
「……ぶれっく、ふぁーすとー」
「ああ、ごめんね。レミはもう食べてきた? とりあえずコーヒー出すわね」
妙に真面目なところのある親友……リズベットが律儀に椅子から立ってもてなしの準備をしようとするのを、ひらひらと手を振って制する。物分かりのいいリズは「あらそう?」とだけ言って、また椅子に座ってくれた。自分は遠慮するような人間では無いことを、良く知っているからだ。
こういった、気を遣わずに済む友人がいるというのは、幸せなことなのだろう。
「……ぷれぜんと、ふぉーゆー」
「は? ってああ、仕入れね。早かったわね、もう出来たんだ?」
椅子に座ってウィンドウを開く。二人の間では見慣れたやりとり……トレードウィンドウだ。いつもは表示だけ確認して金額を入力、あっさりと終わるはずのその動作に、ふとリズが手を止めて眉を顰めた。
「レミあんた…結構無理したんじゃない? かなり大口の注文だったのに、注文全部揃ってるし。別にこんなに急がなくても良かったのよ? それでなくてもあんた、最近アレのせいでろくに寝てないんじゃないの?」
「……れべるあーっぷ」
心配よりは少し責めるような口調で言うリズに、Vサインとともに答える。今回の注文はかなり大口だったが、その分かなり経験値稼ぎになった。
勿論リズの言葉からは論点のずれた返事であり、これでは誤魔化していると思われるだろう口調だが、実は自分にとっては結構本音だ。今現在自分はフィールドに出て狩りをしていない。収入はリズからの店のエンブレム入りの鞘の依頼品の納入と、午後たまに行っている露天商くらい、経験値はその《裁縫》と《細工師》のスキルによるものだけだ。
「まだ上げる必要あるの? スキルだけならもう十分だし、お金だってそうでしょ?」
「……レベルもお金も、もっと欲しい」
欲しい。それは、自分の偽らざる思いだった。
彼女が皆を……皆の帰るべき場所であるギルドを守るために、取った行動は、「蓄える」ことだった。力を、お金を、出来る限りに蓄えておきたい。他のギルドメンバー達が求めるときに、レミがその助けとなれるように。
「……ファー、は?」
「相変わらずバカやってるわよ。……あんなんじゃいつまでも持たないって言ってるんだけどね。鎧の方は五日に一回、槍は三日と置かずに研ぎに来てんのよ。……客だから文句は無いけどさ、流石にあれは煮詰まり過ぎでしょ」
「……シド、は?」
「そっちは音信不通。っていうか、アタシも面識殆ど無いしねえ。一人だけ、雑貨屋のエギルのところにたまにふらりと来るらしいけど、何やってるかとか何処で寝泊まりしてるかとかはまるで分かんないわ。……まあ、」
一息ついて、コーヒーを啜って、リズが再
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