番外編
再びの『合奏』を求めて
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助からないことを。
なぜなら、本人にそう言われていたから。
―――私は、多分|持(・)|た(・)|な(・)|い(・)んだっ。
ある晩、二人きりでの会話で、彼女はそう言った。
その口調は、まるで明日の朝食を語るように、いつもと同じ明るい口調だったのを覚えている。
―――私の……えっと、現実での私の持ってる持病でねっ。ベッドでずっと寝てるってのも理由だけど、なんていうのかなっ、あっちこっちに……血栓? 血のカタマリが詰まっちゃうんだっ。詰まる場所が体だったらまだいいんだけど、頭に行っちゃうこともあるんだなこれがっ。そうするとさ、手術出来ないじゃんっ? ナーヴギア被ってるとっ。
困ったような、照れたような笑顔での言葉。
明るい口調の裏で、泣きそうなくせに。
それでも、強く、眩く笑いながら。
―――一年半くらい経ってからかなぁ? なーんか急に体に力が入らなくなったりすることが、時々あるんだっ。多分、向こうの体がおかしくなっちゃってるんだ、と思う。だから私はきっと……んー……皆と一緒に最後までは行けないんだっ。
あまりにも眩すぎて、どんどん霞んでいくように笑って。
―――でも、レミは。レミは、ずっとレミのままでいてね? 私は、|コ(・)|コ(・)が大好きだから。
―――私の代わりにっ、ココを、ずっと守ってて、ね? 変わらずにいてね?
彼女はそう言った。
私は、その言葉に頷いた。
口下手な自分が出来たのは、頷いて、約束することだけだったから。
そう、私は約束したのだ。
あの時、この場所を守ると。たとえ彼女がいなくても、ココを守ると。
だから私は、彼女自身は守れずとも、その約束だけは絶対に守ってみせる。
◆
私は、変わらなかった。変わらずにいると、ソラと約束したから。
でも、周りは変わってしまった。その変化に抗おうと、私は頑なに以前の生活を守った。
(……変わらないように)
家に帰ってすぐに準備した簡易料理道具がアラームを鳴らしたのを確認して、テーブルに置いておいたカップに注ぐ。自作の、お気に入りのマグカップ。色違いでよっつ作ったのだが、今取りだされているのはピンク色の自分のもの、一つだけ。
(……変わって、しまわないように)
皆で囲んだ食卓に並ぶ四つの椅子はあの頃のままだが、その内三つは空席。そして一つは、もう未来永劫埋まることはない……が、それは分かっている。分かっているが…いや、やめよう。考えるのを放棄して前を向くと、家具の一つの上に置かれた写真立てが目に入った。
写真。四人で撮った映像結晶から作った、ギルドの集合写真。
皆、弾けるような笑顔だ。笑うのが苦手な自分も、精一杯に
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