ジーク・カイザー〜史上最大の作戦
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うなら、その資料に目を通すが良い」
「え……よろしいのですか、閣下」
「声に出すことは許されぬからな」
音声化することを許されない、それもSレベルの原則である。オーベルシュタインが頷くのを見て、フェルナーはゴクリと唾を飲み込んだ。Sレベル機密事項が、今、明かされるのだ。慎重に、何も書かれていない表紙を開き……。
「……閣下、これは……」
「……。」
「……?」
資料には、会議前に実施された様々な作戦行動とその結果が記されていた。
『作戦A マリーンドルフ秘書官より皇帝陛下へ、皇帝の生誕祭の必要性を説明して頂く。→逆鱗に触れ失敗。
作戦B ミッターマイヤー元帥が夫人を伴って来訪、夫人お手製のシチューと高級ワインを持参して、陛下のご生誕を祝う。→シチューは完食されるものの、頑なに拒否。
作戦C メックリンガー上級大将がFTL(超高速通信)にて、「ヴィーナスの誕生」のレプリカ彫刻をお見せし、生命の誕生の尊さを説く。→途中から方向性がおかしくなったため失敗……』
作戦は、上級大将以上の高級将官の人数分だけ実行されたようであった。
「閣下……。まさか、このところ頻繁に行われている会議とは……」
上官に目だけで制止され、フェルナーは慌てて口を閉じた。
「陛下の誕生パーティー企画会議だ」
オーベルシュタインが音もなく動かした唇は、確かにそう語っていた。……もちろん重要なことではある。皇帝陛下の、しかも王朝初代皇帝陛下の誕生パーティーである。だがフェルナーは、急に全身の力が抜けたような気分になった。
「こんなことのために、Sレベル機密を使われるとは……」
フェルナーが苦笑しながら呟くと、オーベルシュタインは表情を変えぬまま、部下の顔を見やった。
「だがこの醜態……」
「ええ、確かにSレベルですね」
「うむ」
静かに会話を締めくくったオーベルシュタインは、フェルナーに資料室と書庫の鍵を渡すと、早くしまってくるようにとジェスチャーで示し、自分の業務へと戻った。フェルナーが厳重に封印された資料室での作業を済ませて戻ると、珍しい来客があった。
「ミッターマイヤー元帥、何用かな?」
上官のあからさまに不審げな声が響く。フェルナーは丁寧に軽礼を施してから、自分の執務机に向かって通常業務を再開した。
「ああ……」
蜂蜜色の髪の元帥はグレーの瞳を一瞬だけフェルナーに向け、再度オーベルシュタインへと視線を戻した。
「御心配は無用だ、元帥。この男は口が堅い」
無駄な好奇心は強いが……と脳裏に閃いたが、その口からあえて発せられることはなかった。軍務尚書の言葉に、ミッターマイヤーは少し意外そうな顔をしたものの、納得したように頷いた。
「卿がそう言うなら、間違いないのだろう。本題に移る。他でもない、陛下のかたくなな態度を俺なりに分析
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