ジーク・カイザー〜史上最大の作戦
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については卿に向かないだろう」
「それもそうだ」
「人には向き不向きがある」
いくつか声が上がる中で、またしても義眼の軍務尚書は、その両の目に異様な光を映しながら淡々と告げた。
「だが卿らに試し得る案がない以上、このまま手をこまねいていては、手遅れになりかねぬ。それに……」
そこで息を継ぐと、殊更に声をひそめて続けた。
「政治的駆け引きも必要になる」
オーベルシュタインの言葉に、一同は息を飲んだ。
「政治的……」
「駆け引き……?」
「……軍務尚書がそこまでおっしゃるなら、お任せしてみようではないか」
諸提督の反応を見た上で、ロイエンタールはオーベルシュタインに鋭い眼光を投げかけた。
「良かろう。皇帝のことは私が責任を負う。卿らは国務尚書や宮内尚書らと実務的な打ち合わせを進めてほしい」
このような流れで、緊急かつ重要な、そして長時間を要した会議は一応の終結を見た。
「お疲れ様です、閣下」
軍務省の執務室に戻ったオーベルシュタインは、アントン・フェルナー准将に迎えられ、先ほどの会議資料を手渡した。
「これを、Sレベル機密資料として保管し、しかるべき後に処分してくれ」
フェルナーは受け取りながら、思わず目を見開いた。軍務省は軍政面においても特に情報を扱う仕事が多い。情報の漏洩は、場合によっては国家危機にもつながりかねない種類のものも存在するため、オーベルシュタインの指示の下、その扱い方のマニュアル作りをフェルナーが主導となり行った。Sレベル機密とは、部外秘どころか、軍務尚書の「執務室外秘」である。その重要性から、電子データだけでなく書面としても保管することになっているが、書面の方は持ち出されるリスクも高いため、案件が片付き次第、焼却処分にするという規則がある。また、その保管については、執務室の隣にあるセキュリティシステム付きの資料室が充てられており、更にその資料室には執務室からしか出入りできない構造となっている。とにもかくにも、そういったレベルの機密事項である。しかし無論、Sレベルの資料はいくつも存在し、それ自体にフェルナーも驚いたわけではない。普段であれば、Sレベル機密に関して、彼の上官は他人に触れさせることがない。したがってフェルナーは、資料がどこに保管されているか知っているものの、ファイリング、書庫の整理、鍵の管理などの全てをオーベルシュタインが行っているため、こうして手にしたことがなかったのだ。少なくとも今までは、である。これは、少しは信用を得たということなのか、と内心で呟きながら、片手で受け取った資料を慌てて両手で持ち直した。
「それにしても長い会議でしたな、閣下。何かよほどの案件が?」
フェルナーが問うと、上官は冷厳な視線を彼に向けたが、返答は思いのほか柔らかな口調だった。
「知りたいと思
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