第五章 妻の自殺
[6/6]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
泉美から解放されたことは
それで良かった思うし、これ以上香子を追い詰めることはしたくなかったからだ。香子は
二人の子供を養いつつ、また獲物を探しているのだ。自分にはもう関わりはない。
忌まわしい事件が続いたが、今、すべてに終止符がうたれて、桜庭は満ち足りた思い
で自室の椅子に腰を掛け、深く長い息を吐いた。香子とのことは少なくとも3年という月
日を楽しんだのだから、十分元はとれている。
桜庭は、若い肉体を弄んだ日々の記憶を手繰り寄せようとした。しかし、香子や子供
達の顔が思い浮かぶだけで、個々の記憶は浮かんでこない。浮かんでくるものは、あの悪
夢の時のものばかりである。3年という月日はどこに行ってしまったのか。
いったい、香子はどんなマジックを使ったのだろうか。確かにあの家に引っ越して4人
の生活が始まった。そして、寝室での睦言や4人での団欒のひと時。その記憶の欠片もな
いということはどういうことなのか。まったくもって不可解というしかない。
しかし、桜庭は全てを忘れることにした。念願の部長の椅子を射とめ、交際費は使い放
題、女など整理券を配りたくなるほど、向こうから近付いてくる。桜庭の人生はこれから
が本番となる。そう思うことで、心に残る不安から目をそらすことにしたのである
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ