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怨時空
第二章 疑惑
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仲の良い夫婦であれ
ばブラックジョークで済んでいたかもしれない。奴は気が狂って自殺した可能性だって否
定出来ない。そうじゃないか」
「ええ、狂っていたのかもしれない。翔ちゃんは、会社でも使い込みがばれそうになって
いた。追い詰められていた。それが妄想を生み出したってことも考えられるわ」
「そうだ、そうに決まっている。そんな人を操る力なんてあるはずがない」
「ええ、私もそう思いたい。でも翔ちゃんが言った通りの死に方だったもの。」
「えっ、奴は、ビルから飛び降りるかもしれないって言っていたのか?」
「ええ、何度も何度も夢で見たそうよ。翔ちゃんが寝ている時に、奥さんが耳元で囁いて
いるような気がするとも言っていた。だからあんな夢を何度も見るんじゃないかって」
「しかし、耳元で囁かれたら目覚めちゃうだろう。眠ってなんていられないよ」
「私にだって分からないわよ、何があったかなんて。兎に角、恐ろしくて鳥肌がたつわ。
人間の意思を操って人殺しをするなんて、そんな人間がいるなんて信じたくない」
泉美は桜庭にしな垂れ掛かった。その体重を受けとめるのに腰を固めなければならなかっ
た。泉美はふるふると震えている。本当に恐ろしがってる。桜庭はしかたなく分厚い肉の
塊を抱きしめた。普段なら嫌悪感に苛まれただろうが、今は訳の分からない恐怖でそれど
ころではなかった。
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