第二章 疑惑
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ばれ、ウエイトレ
スが去ると、開口一番こう切り出した。
「中条さんは、あの女に殺されたんです」
桜庭は黙って探偵の視線を受け止めている。中条は、桜庭の見ている前で自殺した。他殺
などありえない。心のうちでせせら笑っていた。近藤が続けた。
「中条さんには3億の保険金が掛けられていました」
こう言うと、探偵は視線を真っ直ぐに向け、桜庭の反応を見ている。桜庭は微笑みながら
答えた。
「実は近藤さん。中条が自殺するその現場に、私は居たんです。勿論、警察ざたは困るの
で、秘書の方に断ってその場を立ち去りましたがね」
「ほう、現場にいて、ビルから身を投じるのを見ていたと言うのですか」
「ええ、私と秘書の女性、二人で見ていました。止める暇もなく、中条はあのビルから飛
び降りたのです」
「なるほど」
近藤はじっと桜庭の目を見詰めたままだ。すると今度こそとどめを刺すといった調子で、
顔を近付け声を押し殺して言い放った。
「彼女が保険金を手に入れたのは、これで2度目です」
桜庭はここで初めて表情を変え、口を開いた。
「ということは、結婚は二度目ってことですか」
「ええ、最初は18歳の時、やはり10歳年上の方でした。その方も結婚して二年後に自
殺して、彼女は2億の保険金を受けとっています」
「でも、何度も言うが、中条は私の目の前で自殺した。彼女が殺したわけじゃない」
「ええ、その通りです。前の事件では、彼女、もしくは恋人が犯行に及んで、自殺に見せ
かけることも出来た。しかし、今回はさっぱり分からない」
桜庭はこれを聞いて漸く胸を撫で下ろすと同時に、絶対に結婚しようと決意した。香子は
5億の金を持っていることになる。会社など辞めてしまっても良い。ふと、或ることを思
い出した。
「近藤さん。ちょっとお願いがあるんですが、相談に乗ってもらえませんか」
近藤は、怪訝そうに顔を上げた。
桜庭が近藤に頼んだのは、かつて泉美の身辺調査した会社を探し出し、調査資料を入手
することだった。実を言うと、桜庭はかつて頼んだ探偵事務所を失念してしまったのだ。
神田であったことは確かなのだが、場所も名前も覚えていなかった。
当時、その探偵は泉美の浮気相手を突き止めていた。しかし、離婚する理由が失われ
契約を途中解除したのだ。料金が安くなると思ってそうしたのだが、さにあらず、全額請
求された。レポートをどうするか聞かれたが、険悪な雰囲気のまま「ドブに捨ててくれ」
と怒鳴ったのだ。泉美の相手など見たくも知りたくもなかったからだ。
数週間後、近藤から会社に電話があった。例の喫茶店で待っていると言う。すぐに駆
けつけると、以前と同じ席で待っていた。桜庭が席につくと、近藤が口を開いた。
「こんな偶然があるんでしょうか。奥さんの浮気の相
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