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番外編:或る飛龍の物語
或る飛龍の物語《1》
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は、秋也を認めた。

 同時に、茅場秋也は、《茅場》であることを捨てて《京崎》となることを宣言した。

 
 もう、兄の背中は追わないと。


 兄は、笑って、恐らく秋也が生きてきた中でたった一度だけ、秋也だけに向かって笑って、消えた。




 そしてあれから一年がたっている。秋也――――ハザードは今、目標を達成してしまったが故の空虚感に死にそうになっていた。



      
                     *



「……暇だ」
「珍しいなハザード。お前が起きてるなんて」
「いいだろ別にたまには起きてても。珍しく眠くねぇんだよ。しっかし暇だ……」
「じゃぁ寝てろ」
「だから眠くねぇんだって」


 隣でメロンパン(によく似た何か)にかぶりつき、世にも幸せそうな表情をするセモンを尻目に、ハザードは再び大きくため息をついた。

 ここしばらく、異様に暇な日々が続いている。やることがない。ひたっすらない。普段なら寝ていればいいものを、今日に限ってなぜか眠気が来ない。超さえさえ。もうこのまま明日まで起きていられそうなほど。


「……暇だ」
「あ〜もううるさいな!!人がメロンパン喰って幸福味わってんのに邪魔すんな!!」
「……それにしてもお前、ホントにメロンパン好きだよな。コハクにキスされてる時より幸せそうな顔してんぞ」
 

 セモンはメロンパンが大の好物である。三度の飯よりもメロンパンが好きである。

 セモンはぽか〜ん&恐れ的な表情を浮かべて、
 
「…………マジ?」
「マジマジ」
「……ぶっ殺されるかな……まぁイイや。メロンパンは欠かせないし。今度コハクには俺の方からキスするってことでOKにしてもらお」
「…………お前もまたすごいことをさらっというやつだな」
「おむぁふぇのふぉふがこふなっふぁらふごふぉうふぁふぇふぉな」
「何言ってんのかさっぱりわからん」

 ここでセモンはメロンパンをすべて食べ終わると、ごっくんと飲み込んで盛大に幸せそうな顔をしたのち、再びこちらを向いて言った。

「……お前の方がこうなったらすごそうだけどな、って言ったんだ」
「どうなったらだ。メロンパン頬張ったらか。あいにくだが俺はアンパンの方が好きだ」
「ちげーよ。彼女出来たら」


 ハザードはそれなりに顔もいい。頭もいい。加えてSAO、ALOともにトッププレイヤーと言っていい実力だ。事実、最近はサラマンダー最強と名高いユージーン将軍にデュエルを何度も申し込まれるくらいだ。

 そんな彼は、どうも他人の恋愛関係に興味はあっても、自身のそれに対して興味がないのだ。まぁ、彼本人がそのようなジャンルに本来大した興味がないというのもあるのだが……。


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