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弱者の足掻き
十二話 「蟲」
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るものなど一つしかない。
 何故。何故何故何故。まだ早いはずだ。まだ余裕があるはずだ。俺が勘違いしていたのか。それとも、捻じ曲がり早まったとでもいうのか。おっさんがいることで……いること、で……?

『本当なら丁度鉢合わせしてた。命拾い』
『それ以外もドンピシャ』


『まるで世界が俺を殺しに――』


 あ……ああ、ああああああああああああああああああああああああ!!!
 あ、あああああ。違う、違うはずだ。それは違うはずだ。きっと違うはずだ! そんなことが理由であるはずがない!!
 死んでいたはずだなんて。俺のせいでズレたなんて。そんなことがあるはずがない!!
 踏みしめていたはずの地面が偽物だと、そう知らされた様に。積み上げるための、その最初を履き違えていた錯覚。何をすれば。何を、何を……。
 
「おっさんはその話、どうするつもりで」
「俺としちゃ蹴る予定だ。向こうの偉そうな態度が気に食わん。嫌がらせでもしてやるつもり、なんだがなぁ」

 嫌がらせなどしたらどうなるか。逆らったらどうなるか。その末路を知っている。ここでもまた、変わるというのか。
 奇跡的に求められた意見。なら、少しは口が出せる。だが今の体調ではロクに話すことなど出来ないだろう。幸い蹴る予定だという。なら、また明日にでも話せばいい。こんな状態で、こんな頭でまともな言葉など出てくるはずがない。
 今は、早くこの体を横たえることを優先しなければ。

「気に入らないなら、断っていいと思います。すみません、疲れているので、また明日聞かせて下さい」
「そうか。ならそっちは明日でいい。もう一つ話があるんだ。聞いてけよイツキ」

 酷く久しぶりに呼ばれた名前。
去ろうとした俺におっさんはそう声をかける。そしてその返事を待たずに話し始める。

「とある親戚の話だ。関係で言えば、従兄妹だったやつの家族の話だよ」

 倒れそうになり壁に手をつく。音がしないよう、ゆっくりと体重を預ける。荒れた息はまずい。抑えなければ。ああ、酷く息苦しい。息が出来ず喉と腹が震え小さく嗚咽が漏れる。何故俺は、こんなに苦しんでいるんだ。

「たまにだが会うことがあってよ、色々と話されたなぁ。そいつの夫との間に出来た子供のことも。酷く手のかからない子だと言っていた。ロクに泣かず、一度言った事はすぐ覚える。余りに早熟だと。
……だが不思議なことにそのあと、急に泣くようになったらしい。二度、三度言っても覚えないこともあったかと思ったらイタズラもし始めたと。あいつ嬉しそうだったなぁ。何かしてやりたいのに、今までは何もすることがなかった。自分の母親や周りで聞いたような苦労をして、母親だという実感を得たかった。親なのに頼られず、手をかけされても貰えず寂しかったってさ」

 視
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