十二話 「蟲」
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か悩んでるみたいだったから、あの時の俺みたいになれればって、そう思って。あー自分で言ってて分っかんねえええええ」
「いや、何となく分かる。……心配、してくれたんだ」
『ぶつかって悪かったよ。ごめん』
最初の日。カジ少年とぶつかり、俺が階段から足を下ろせた日。二度目の邂逅をして持ちかけられた勝負でカジ少年にさんざんに勝った後、そう言われた。走って逃げたのは怖かったから。でも段々と罪悪感が大きくなっていったんだと。
あの時も謝ってくれた。自分が悪いとわかればその言葉が出る少年だった。
その気持ちが嬉しかった。そんな気持ちが、羨ましかった。
酷く妬ましく、頭を抑えるふりをして顔を手で覆い、流れそうな涙を隠す。
これは、何の、どっちの涙なのだ。それさえ、分からない。
そして、二つ目の分かれ道。サジ少年達とかここで別れなければならない。
三人が心配そうな目で俺を見る。
「おい、ヤバければ送っていくぞ」
「大丈夫だから。もうそんな遠くないから。最近物騒だというじゃないか、遅くなって親が心配しているぞ。早く帰ってやれ」
それでもと食い下がろうとする三人に再度帰れと告げ、俺はさっさと歩き出す。これが一番手っ取り早い。
あいつらがいなくなったからだろう。心理的な枷でも外れたのか、一層足が重くなる。鉄の重りでもつけているようで、足がろくに上がらない。一見、引きずるように足を前へ進めていく。前へ前へと進もうとする意識に追いつかず、倒れてしまいそうだ。
これほどまでに限界だったとは。誰にも見られず一人でよか――
「つらそうだね。ほんとに大丈夫イツキ君?」
「……ああ、そう言えばお前はこっちだったな」
覗き込んできた少女に呆れたように言い返す。思い返せばこいつとの別れはもう少し先だった。
ずっと黙っていたからほとんど忘れていた。もう少し喋ってくれ。気づかないで無体を晒してしまったじゃないか。
「ひどいなぁ、ずっといたのに。そんなに影薄い?」
「ああ、薄い薄い。舟の時みたいに泣けば薄くなくなるぞ」
「あれは無し!! あれはその……気のせいだよー気のせいなのさー。きっとイツキ君の頭がおかしくなって見せた幻だよ!! だから忘れても何の問題もないのだよきみぃ」
顔を赤くして忘れろー忘れろーとピンと立てた指で俺を差しながら少女が言う。蜻蛉にするようにグルグルと回し始めるが、そんな自分が今まさに変な行動をしているという自覚はないのだろうか。
「おかしい、か。なら正常がどうなのかを知るためにも広めないとな。べそべそ泣き喚いてたって」
「ちょ、何の関係もないじゃないのそれー!! 絶対言いふらしたいだけだよねそれ!! 性格悪いよ!! 嫌いだなー私イツキ君のそういうところ嫌いだなー」
「
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