第八章 望郷の小夜曲
第四話 ハーフエルフの少女
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もうないがな」
切ない色に染まっていた。
「え? え? ええっ!? シロウさんまだ食べてなかったんですかっ!?」
「ああ、皆の食べる速度が予想以上でな。食べる機会を逸してしまった」
「そ、それじゃあこれを」
ティファニアが慌てて最後のシチューが入った皿を士郎に差し出すが、士郎はそれを手で遮り小さく首を振った。その視線の先には、スプーンを握って期待を込めた視線を向けてくるセイバーの姿が。士郎の視線の先にいるセイバーの姿を見たティファニアが、困った顔をする。
「で、でも、アルトはもうこれで十杯目ですから……」
「まあ、セイバーも頼めば譲ってくれるだろうが、あれだけ楽しみに待っているのを見たらな。まあ、皿洗いのついでに、森に生っている果物でも食べておくことにする」
士郎が苦笑を浮かべた顔で小さく笑うと、空になった鍋を洗うため、川に向かって歩き出した。
「わ、わたしも行きますっ!」
その後を、セイバーに最後のシチューが入った皿を渡したティファニアが、シチューを食べ終わった子供たちから回収した皿を持って追いかけてきた。士郎に追いつくとティファニアは、後ろを振り返ってシチューを幸せそうに口に運んでいるセイバーに声をかけた。
「アルトッ! わたしはシロウさんと皿洗いに行ってきますから、子供達のことを見ていて! それと食べ終わった皿は軽く水で洗っておいてね!」
スプーンを口に咥えた姿でコクコクと頷くセイバーに苦笑いを返した後、ティファニアは川に向かって歩いている士郎を追いかけ始めた。
士郎がウエストウッド村で目を覚ましてから、既に二週間以上経過していた。
最初の頃は上手くいっていなかったティファニアや子供達の関係も、ティファニアとの関係が良好になるにつれ良くなり。今ではもう、まるで家族のようになっていた。
「ごめんなさいシロウさん。シロウさんの分まで食べてしまって」
「いや。テファが謝ることじゃない。謝らなければいけないとしたらセイバーだ。もしかしたら、あの調子だと大分苦労したんじゃないか?」
森を分けるように流れる清流の端に膝を曲げたシロウとティファニアが、川の中に石を入れただけの簡単な洗い場で大量の皿を洗っている。雲ひとつなく晴れ渡った空から降り注ぐ陽光が水面に反射する光景は、目が焼かれるかというほどに眩しい。
森を揺らし吹き抜ける濃い緑の匂いを感じながら士郎は目を細める。
「え、ええ……だ、だけど、ま、まあ、たくさんご飯を食べるのは元気な証拠ですし」
「それにしても加減は必要だが……な」
笑顔は浮かべているが、明らかに無理している様子のティファニアに、士郎は呆れたような顔を向ける。
「
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