第八章 望郷の小夜曲
第四話 ハーフエルフの少女
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っさとつげよっ!!」
「全くしょうがない奴だな」
次々と突き出される皿を受け取ると、士郎は鍋の中からシチューを注ぐ。
士郎が両手で作った輪よりも大きく、底も深い鍋であったが、既にそこが見え始めている。鍋は軽く三十人前以上はあった。対するその消費者は、十歳前後の子供たちと大人などを含めても十人を少し超えた程度だが、半分以上を子供が占めているということで、消費量は精々七、八人前ぐらいであるはずなのだが、三十人前はあるだろう鍋の底は既に見え始めている。
その原因は、
「しょうがないだろ。早くしないと―――」
「おかわりです」
金髪の少女であった。
「あ、アルト……流石にもう、これ以上は」
「おかわりです」
「その、もうこれで十杯目よ。流石にこれ以上は―――」
「おかわり……駄目ですか」
皿を突き出した姿勢で、しゅんと項垂れて見せるセイバーの姿に、助けを求める視線を士郎に送るティファニア。しかし士郎はその視線に気付きながらもあえて無視し、子供達の皿にシチューを注ぎ込む。子供達も分かっているのか、あえてティファニアに視線を向けず、士郎から皿を受け取ると黙々とスプーンを動かしている。
ティファニアは涙が浮かび始めた綺麗な目をウロウロとさせると、「はあぁ〜」という大きな溜め息を付きながらセイバーが突き出す皿を受け取った。
「シロウさん恨みますよ」
「……すまない」
じと〜とした視線を受けた士郎が、視線から顔を背けながら小さく謝る。そんな様子を見たティファニアは、くすっと笑うと不満顔から一転して悪戯っ子のような顔を表情を浮かべる。士郎はハハハと乾いた笑いを浮かべながらティファニアから皿を受け取ると、鍋に残ったシチューをこそぎ取って皿に移す。ティファニアは最後のシチューが入った皿を受け取ると、青空の下、庭にテーブルを出しただけの簡単な食事の席を見渡す。
「早いものですね。シロウさんがここに来てからもう十日以上経っているなんて」
「そうだな……本当に早いものだな」
「ふふふ……最初はあんなに警戒していた子たちも、すっかりシロウさんに懐いちゃって」
「まあ、最初はえらい大変だったがな」
ティファニアの横に士郎が腕を組んで立つ。その手には、空になった鍋が左手に、お玉が右手にあった。
「今はもうすっかり懐いちゃって、今もシロウさんの料理にメロメロですね」
「ふむ、それではテファはどうなんだ?」
「もちろんわたしもメロメロですよ。今日のシチューもすっごく美味しかったです。わたしもついついおかわりしちゃいましたし」
背の高い士郎を見上げてにっこり笑いかけるティファニアの笑顔はとても朗らかなもので。それを見つめる士郎の顔も、とても優しく―――
「そのおかげで俺の分が
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