第八章 望郷の小夜曲
第四話 ハーフエルフの少女
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の何かに見えるか?」
「え? あ、ああっ! ち、違います! ただ人が使い魔だなんて聞いたこともなくて」
「まあ、かなり珍しいようだが。まあ、正確に言えば『使い魔だった』かな」
顔を真っ赤に慌てるティファニアの様子に、士郎はぽりぽりと頬を指先でかきながら苦笑を浮かべると、小さく溜め息を吐いた。
「使い魔だった?」
「ああ、その証である使い魔のルーンが消えてしまったんだ」
左手を軽く揺らしながら士郎が肩を竦めて見せると、ティファニアが普段よりも一オクターブ上の声を上げる。
「じゃあ、もう使い魔じゃない?」
「そういうことになるな」
「……じゃあ、もう戻る必要はないんじゃ」
士郎を見上げるティファニアの目と声に、期待の色が混じる。しかし、士郎はそれに顔を振り答えた。
「いや、駄目だ」
「え?」
「まだ駄目だ」
「まだ?」
まだ? と首を傾げるティファニアに、俺は小さな桃色のマスターの姿を思い浮かべる。
出会った初めの頃は、周りからの蔑みの視線を振り払うかのように、貴族の名誉だ、誇りだと口にしては無茶をする姿に随分とハラハラとしたものだ。近寄る者を、話しかけてくる者を警戒し、気を許すことなく……。
……その姿は、まるで迷子の子猫が近付いてくる者に怯え必死に威嚇するかのようで。
そう……怯えていた。
ルイズはただ怯えていただけだ。
この世界は基本的に、貴族とはメイジであり、メイジとは貴族だ。
魔法が使えなかった頃のルイズにとって、魔法が使えない自分は貴族でもメイジでもないのではと言う思いがあったのではないのか。貴族の、それも大貴族である公爵の下に生まれ、それなのに他の家族が全員使える魔法が自分には使えない。唯一人、周囲とは全く違う。それはどれだけ恐ろしいことだっただろうか。
だからこそ、ルイズは魔法が使えない代わりに必死に勉強をし、貴族の名誉や誇りを示し、周りと同じ貴族だと伝えようとしたのだろう。周囲からの蔑みや侮蔑から身を心を守るため、威嚇していたのだろう。
だが、どれだけ勉強が出来ようが、魔法が使えなければ意味はなく。
認められることはなかった。
しかし、お前は自身の魔法に目覚めた。
その力を公にすることは出来なかったが、魔法が使えるようになったお前に、蔑みや侮蔑の視線を向けてくるものはいなくなった。
それどころか、お前の力を貸してくれと望まれるまでになった。
まるで……醜いアヒルの子のようだな。
周りと同じではないということで、蔑まれ疎まれたアヒルの子が、成長したことで自分はアヒルではなく白鳥だと気付く。
ルイズもまた同じだ。
成長し、ルイズもまた、自分が白鳥だと気付いた。
だが
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