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剣の丘に花は咲く 
第八章 望郷の小夜曲
第四話 ハーフエルフの少女
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しかしどうするか」
「何がですか?」

 洗い終えた食器の水を切りながら士郎が首を傾げていると、ティファニアも首を傾げてみせる。

「件のセイバーだ。言えば食事の量を自重してはくれるだろうが、出来れば腹一杯食べさせてやりたいし」
「……シロウさんはアルトのことが本当に好きなんですね」

 水を切った食器を汚れないように、先に洗っていた大鍋の中に入れながら士郎が唸り声を上げている。その様子を残りの食器を洗いながら見ていたティファニアが、微笑ましげに目を細めながら笑みを浮かべていた。ティファニアが浮かべるその笑みを感じた士郎は、その視線から逃げるように、濡れた手を用意していた布で拭きながら顔を背けると、ティファニアが浮かべる笑みがますます濃くなる。

「まあ、否定はしないが……しかし、どうするかな」
「そんなの、シロウさんがアルトの分の食料を森から獲ってくればいいだけじゃないんですか? 最近はそうしてますよね」
「あれは応急処置のようなものだ。ずっと俺がいるというわけじゃないからな。そうだな、セイバーに狩りの仕方でも教えておくか? ……まあ、セイバーなら罠なんか必要ないだろうが」
「え? シロウさん出て行くんですか?」

 立ち上がり森を見ながら顎に手を当て考え込む士郎を、膝を曲げて皿の水を川に向けて切っていたティファニアが、大きく見開いた目で見上げる。士郎は信じられないといった顔を浮かべるティファニアに困ったような頭を向けると、蒼く澄み渡る空を見上げ、遠くを見つめるように目を細めた。

「今頃……泣いているだろうからな」
「泣いてる?」
「ああ、泣き虫なマスターが、な」
「マスター?」

 士郎の言っている意味が分からず、ティファニアが訝しげな声を上げる。何かを問いかけるようなティファニアの視線を感じながら、士郎は空から自身の左手に視線を移動させた。視線の先にある自身の左手の甲。そこには、セイバーとの契約の証である令呪の姿がある。令呪の姿しかなかった。
 
 ガンダールヴのルーンはなくなっていた。
 デルフが言うには、心臓が止まったせいではないかと言うことだが。
 
「……ティファニアは使い魔って知っているか?」
「使い魔、ですか? え、ええ知っていますけど。それが何か?」

 急なシロウ問いかけに戸惑いながらも応えるティファニアに対し、士郎は自分自身を指差す。

「その使い魔なんだ」
「え? 誰がですか?」

 きょとんとした顔をするティファニアに、自分を指差す指を動かすことなく、士郎は再度答える。

「俺がだ」
「……シロウさんは人ですよね?」

 きょとんとした表情のまま、士郎の全身を下から上までじ〜と見つめたティファニアは、きょとんとした顔のまま首を傾げる。

「人以外
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