暁 〜小説投稿サイト〜
おいでませ魍魎盒飯店
Episode 4 根菜戦争
嵐の前の静かなる朝食
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「まぁ、お前らには縁が無い話だよな」
 予想通りの反応に、キシリアはそっとため息をつくと、カリーナの作ったアイランをゆっくりと飲み干す。
 そしてカリーナの目を見て小さく頷くと、次の台詞を紡ぎだした。

「早い話が、森を焼いて畑を作る方法だ。 まぁ、本来はもっと南の国に多いラトソルなんていう酸性の赤土に適した農業なんだがな」
「……なんでそんなアホな事するニャ? わざわざそんな事をして樹麗人(ドライアド)達に喧嘩を売る理由がわからんニャ」
 キシリアの言葉に一番反応したのは、意外にもマルだった。
 まぁ、魔界の住人であることを考えれば、人間である二人よりこの愚かさを理解できたという事だろう。

 樹麗人(ドライアド)たちを敵に回すという事は、彼女たちの管理する森の住人……虎人(フーレン)人獅子(ヌリシンハ)を敵に回すという事に他ならない。
 さらには、森の主である"榛の魔王(エルケーニッヒ)"や森と月の女神にして森の生き物の守護者であるアルテミスやディアーナの怒りを買うことにもなる。
 ケットシーであるマルの視点で考えるなら、まさに百害あって一理も無い愚挙だ。

「まぁ、愚かしい行為であることはおいといて、まずは聞け」
 さもくだらないことを話すぞといわんばかりの表情でテーブルに肘をつくと、キシリアは侮蔑に満ちた笑みを唇に刻む。

「食料となる植物を自分たちで植えて、その管理下で育成・収穫することを農業って言うんだが、その一番原始的で効率の良い方法の一つが焼畑農業でな」
 そこでアイランで喉を潤そうとするが、あいにくと彼女のカップはすでに空だった。
 すかさずカリーナがアイランの入ったミルクピッチャーを手に取る。

「農業をするには、農作物となる植物に栄養を与え続けなければならない」
 カリーナからアイランの入ったカップを受け取ると、キシリアはすかさず喉を潤した。
 そして、なれない人間がアイランを単品で飲むにはちょっといただけない事を知る。

「で、森を焼いた灰ってのは、その栄養として非常に優れている……まぁ、同じ植物の体から出来ているしな」
 植物を焼いた灰というものは、古くから人類になじみの深い肥料の一つである。
 そして焼畑農業とは、酸性に偏った土地を中和し、地中の窒素化合物を有用に変化させ、雑草、害虫、病原体の防除まで同時に行うことが出来るという非常に合理的な方法なのだ。
 だが、そこには非常に大きな問題が存在していた。

「解せんな。 お前がドライアド達と仲がよいことは知っているが、怒りの質が違うように思えてならん。 何がそこまで軽蔑する理由になるんだ?」
 クリストハルトが自分の椅子に座りなおしてその眉間に皺を寄せる。
 確かに自分の友人が被害を被ればいい気分はしない
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