Episode 4 根菜戦争
嵐の前の静かなる朝食
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出せ! 大皿でいい!! ちがう、その隣の浅いやつだ!」
フライパンの中から目を離さないまま、キシリアは次々と周囲に指示を飛ばす。
「了解ニャ!」
その気になればひとりでいくらでも並行作業を出来るのに、人をわざわざ使うのは、気分が落ち着いて他人を受け入れる余裕が出来始めた証拠だった。
「クリストハルトはパンを切っておけ」
「おぅ」
いつもの調子に戻り始めた事にホッとしながら、カリーナやクリストハルトが厨房に足を踏み入れる。
あとは勝手知りたる我が厨房だ。
クリストハルトはいつもの場所からパンを取り出すと、聖印を切って保存用の呪詛を振り払い、パンきりナイフを取り出して手際よくパンを切り分け始める。
この男、とかく切るだの刻むという作業をさせると手際が良い。
そのうち刺身の作り方を仕込んでやろうとキシリアは密かに画策していた。
「カリーナは飲み物の用意! この間教えた"塩ヨーグルト飲料"を作れ! いいか、青唐辛子は丁寧に細かくすり潰すんだ!」
「……了解」
アイランはトルコの伝統的な飲み物であり、なんとヨーグルトに塩と辛い青唐辛子のペーストを混ぜた代物である。
甘いヨーグルトになれた人には斬新過ぎる味なのだが、不思議と暑い国の食べ物と一緒に食べると抵抗感が無い。
むしろ甘いものが苦手なクリストハルトあたりはかなり好む味だった。
材料は簡単。
ヨーグルトを少しの水で薄め、塩と青唐辛子のペーストを入れて混ぜるだけ。
人によっては好みでレモンを入れたりもするらしい。
「カリーナ、塩が少し多い。 作り直し」
「……ハイ」
シンプルだがそれゆえに誤魔化しが聞かず、カリーナの塩加減の感覚を鍛えてるために、キシリアはよくこの手の課題を出してくる。
「だが、この間よりはいい。 青唐辛子の量にも注意しろ。 あと……これは俺の好みのバランスだからな?」
「……わかりました」
つまり、肉体労働の多いクリストハルトは塩分を多く体が求めるため、このままの塩加減でも問題が無い。
逆にケットシー達には塩を控えめにし、刺激物である青唐辛子も量を控える必要がある……
全てを口にしないあたりが実にキシリアらしい教育方針だ。
そしてその教えを受けるカリーナもまた、その意図を的確に読み取っている。
この二人、存外に相性が良いのだ。
そんな事をしている間に、キシリアの料理のほうも最終段階に突入していた。
すっかり水気の少なくなったペーストを理力で一瞬にして冷却し、刻んだ森髭を加えてコロッケ程度の大きさに手早く纏め上げる。
そしてそれを薄切りにしたレモンの間に挟みこむようにして皿に盛り付け、上からパセリを散らして飾り上げた。
「それ……どこの国
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