第二十章
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持っているんじゃありません。」
石田は顔をしかめた。
「私共を信用して下さい。信用出来ないというのは、さっき言っていた石川警部に関係があるのですか。つまり、警視庁も信用できないと。榊原がそう言っているのですか。」
「実は、この事件は公安事件です。」
これは榊原から言えと指示された台詞だった。公安と刑事はもともと仲が悪い。公安に事件を持って行かれることを極端に恐れているから、極秘扱いになると言うのだ。石田は拳銃の件をうやむやにしようとその台詞を言ったのだが、効果はあった。
韮崎が息を呑む音がかすかに聞こえた。
「公安だって、とんでもない。これはれっきとした刑事事件だ。警官が二人殺された。その事件とも関係しているってことでしょう。」
「その通りです。二人を殺したのは石川警部です。」
今度はごくりと生唾を飲む音がはっきりと聞こえた。
「いいですか、これからFAXを送ります。発砲事件のあったビル1階の図面を送ります。それと、私は土木技術者なんですが、何処をどうやれば床が開くかヒントもかいてあります。早めに二人の警官を救出して、洋介君の遺体を回収して下さい。開閉スイッチの位置も図面に描いてありますが、例の偽警官はそれを破壊したと言っていました。それが修復可能かも調査して下さい。」
「分かりました。すぐに取りかかります。ところで、小野寺晴美さんを保護したいのですが、場所をお教え願いませんか。」
「さっきも言いましたが、これは公安事件です。情報が漏れれば、晴美が狙われます。明日まで待ってください。それでは…」
「待って下さい。石田さん、何かやろうとしておるんじゃありません?素人が危険を犯す必要はありません。我々がいるのです。そのために警察があるんです。」
「お言葉ありがとうございます。ところがこっちには三人も玄人がいます。ではFAXを送ります。」
電話が切れ、韮沢は受話器を持ったまま、不思議そうな顔をして呟いた。
「三人だって。榊原を助ける奴が三人も警視庁内にいるって。そんな馬鹿な、そんなことあり得ない。」
コンビニでFAXを送り、着信したかどうか確認をいれ、話したがる韮沢を冷たくあしらい、車を環七の流れに乗せた。しばらく走らせ、方南町交差天を左折し、新宿に向かった。既に時計の針は二時を回っている。あと二時間だ。
親父さんは眠らずに、朝早くその男の自宅を張った。男は警視庁にまっすぐ入って行き、出てくる様子はないという。警視庁内部では榊原の唯一の友人が、その男の今日の予定を探っているはずだ。分かればすぐに榊原に知らせることになっている。
石田は榊原と親父さんに二丁の拳銃を取り上げられたことに、苦い思いを抱いた。もし、榊原の推理が正しければ、もし、和代に手を掛けた少年が成長してその男に成り
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