第十八章
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た天井床から男が顔を覗かせた。石田が持っていたナイフを投げつける。男のはそれを避けた。床が軋みをあげながら閉じられた。
「おい。上でも操作できるはずだ。どっちに優先権があるんだ。」
「当然上だ。」
石田は男を引きずり、晴美の入っていた牢屋に押し込めた。
「晴美、俺の後ろにいろ。もうすぐ、敵が地下室の床を上げて入ってくる。」
石田は、右足から拳銃を引きぬいた。晴美が石田の背中に抱き付いてきた。そして涙ながらに言った。
「仁、右のその木製の箱を見て。中はセメントで固められているけど、その中に洋介君がいるの。」
石田が視線を落とした。そこには木製の縦長の木箱が置いてある。表面はコンクリートで固められているが、その内部に洋介君が横たわっているのだろう。石田は木箱に向かって黙祷しただけだ。それ以上の行動を取るゆとりもなかった。
「晴美、もう泣くな。きっとあのデブが殺したんだろう。敵をとるか?もし望むのならあのデブを殺してやる。」
「やめて、そんなことを言ったんじゃないわ。あの男を殺しても洋介君は戻ってこない。」
「今の俺なら難なくやれそうな気がする。自分でも怖いと思うが、今の俺なら何でも出来る。そんな気がする。」
「怖いこと言うのやめて。仁。いつもの仁に戻って。」
そう言われても石田の興奮は納まりそうもなかった。床が開けば間違いなく敵が襲いかかってくる。石田の持つ拳銃には8発の銃弾があるだけだ。敵は何人いるのか分からない。しかし、石田の興奮はその生死を分けた闘争に誘発されていたのである。
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