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シンクロニシティ10
第十八章
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。近づいてみると車にはシートカバーが掛けてある。こちらの方が隠れるのには都合がよい。石田は車と壁の間に身を沈め、持久戦に備えた。
 腹が鳴る。朝、コンビニで買った握り飯二個食べただけで、昼飯を抜いていることに気付いた。蒸し暑い。ティシャツもコットンのジャケットも汗まみれでぐじゃぐじゃだ。腰に差した警棒を取り出し、掌を叩いてその重さを量った。
 そしてパンツの裾の上から右足外側に隠した拳銃をゆっくりと擦った。やや小ぶりのオートマティックだが銃弾は8発装填されている。これだけの装備があれば何とかなるだろう。再び腹が鳴った。角のコンビ二を思いだし深い後悔の念に襲われた。

 最初の変化は、2時間後の6時半頃起こった。唯一開いているシャッターが外側から締められた。うとうとしていて、その音で目を覚ましたが、まさに飛びあがらんばかりに驚いた。次第に明かりが薄れ、しまいには真っ暗闇になった。
 恐怖が心臓をわしづかみにし、その鼓動が速まるのが分かる。石田は生まれて始めて漆黒の闇を体験した。生き物にとって光りが唯一の希望なのだ。目を閉じていたほうが、まだ心の平安を保てる。石田は目を閉じ、そして耳を澄ませた。
 再びシャッターの音が聞こえてきたのは、それから2時間後のことだ。石田は警棒を握り締め、シャッターから漏れる明かりを見守った。漆黒の闇に月明かりが差し込む。微かな光が駐車場全体に充満していった。石田は腰を上げた。
 光りの中に一人の男の姿が浮かび上がった。男はベンツの横を歩いて行き、そして腰を屈め何かを操作したようだ。半開きのシャッターが再び閉まり始め、同時に床が振動しはじめた。ベンツの横の地面がせり上がった。機械的な音が断続的に続く。石田は目を見張った。晴美は地下にいるのだ。
 床が斜め45度にせりあがって止った。シャッターが閉ざされ地下からの光りで、例の男の横顔がくっきりと浮かび上がる。その顔がだらしなく歪んだ。男が階段をゆっくりと下りてゆく。
 石田は車の陰から這い出た。男の頭が床の下に消えるとゆっくりと地下室の入り口に近づいた。首を突き出して地下に続く階段を見下ろした。男の後姿が見える。ワイシャツが汗に濡れて、盛り上がった背中の筋肉を浮き上がらせている。
 その筋肉を見て、奴に勝てるかどうか不安になる。警棒を握り締め、階段を下り始めた。
 男はすぐに気付いて振り向いた。背中に手を回して何かを掴んでいる。二人は上と下で睨み合った。男が唸った。
「貴様、どこから湧いて出やがった。この蛆虫が。」
「俺が蛆虫だと何故分かったんだ。サナダムシのふりをしていたんだが。」
 男はにやりとして背中から刃渡り20センチもあろうかと思われるサバイバルナイフを抜いた。石田が一歩踏み出した。男も一歩上がった。石田にとって不利な体制だ
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