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シンクロニシティ10
第十七章
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俺達には時間がない。三日後の朝10時に電話をくれ。そして取引は、その日の午後3時。」
「分かったよ、モンスター。10時に電話する。」
思いのほか有利に取引となった。よほどブツが欲しいのだろう。ブツのことは三人にしつこく聞かれたが、話さなかった。日本人に話す気がしなかったからだ。三人はヤクと勘違いしたようだ。そう思わせておけばよい。
 
 ウエムラレディースクレジットは豊島区役所近くの雑居ビル5Fにあった。飯島はそこの専務だが、その実態は北朝鮮スパイだ。小野寺は飯島の顔と名前は知っていたが、その所在や日常については知らなかった。
 榊原が飯島の名前を出し、二人の刑事殺しに触れた時、小野寺はある男を思い出した。20年前、和代を襲った男達の中にもその男はいた。叔父からも何度かその名を聞いた。北で訓練をうけた本物のスパイだ。彼が動く時は、本部が動く。
 その男が、榊原警部補を陥れるのに大きな役割を担ったことは間違いない。ということは今回も動く可能性が強いということだ。まして和代との因縁も深い。互いが知っている男が同一人物だと気付くのに多少の時間を要したが、分かってしまえば対策は立てやすい。
 
 今回の事件でも、飯島が中心的な役割を担うとすれば、彼を見張ることにより、何かが見えてくるはずである。そのためには時間が必要だった。だからこそ晴美の肉声を求めた。その間、飯島の動きを探る。これが皆が飛び付いたアイディアである。
 飯島は東陽町駅前のマンションから車で事務所に向かった。三人の男は二台の車を用意していた。シボレーで何度も振り切られたという坂本警部の話を思い出したからだ。しかし、一日目、飯島は自宅と事務所の往復で車を使っただけだ。
 二日目の午後三時、飯島は事務所を出て、向かいの通りの喫茶店に出かけた。そこで太った男から小さな金属製の物を受け取った。親父は車を置き、飯島を追って喫茶店に入ったのだが、それが小型テープレコーダのようだったと後に語っている。榊原と石田は飯島に接触したその男の後を追った。

 小野寺は川口のビジネスホテルの一室に閉じこもっていた。どこに行ってもスパイの目が光っている。相当数の人員が動員されて写真片手に蠢いている。奴等も必死だ。しかし、この三日の間で、榊原達が状況を一変することだってあり得る。それを待つしかない。
 ウイスキーを流し込み、まどろんだ。あの光景が網膜に浮かび上がってくる。砂浜を散歩する少女がいた。朝6時を回った頃だ。松林の中に建つ建物の中から、男達が少女を眺めていた。突然、飯島が言った。
「おい、お前等、あの女をここに連れてこい。」
 お前等と呼ばれたのは3人の少年だ。15、6歳で北朝鮮から日本語研修に派遣されていた。語学の天才ということで、三人とも英語、ドイツ語、フラン
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