第十二章
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経緯を語った。しかし、拳銃を手に入れたことは黙っておくことにした。聞き終えると、榊原は困惑顔で言った。
「おいおい、晴美さんに続きお前も襲われていたって、それって本当かよ。」
「嘘を言ってどうする。俺を襲った男達の目的は、やはりお前から預かったあのDVDかもしれない。いや、一連の事件が関係あるとすれば、例のMDのことも気になる。」
「いや、MDの方は、この前も話した通り、製薬会社から盗まれたもので、そのうち、どこから盗まれたか分かると思う。だから洋介君失踪の原因になったとは思えない。お前が襲われたのは、これは、どう考えてもDVDが原因だろう。」
「そうかもしれない。奴等は俺のマンションの鍵を持っていた。しかし家捜ししたって見つかるはずはない、DVDは会社のロッカーの中だ。奴等はお前の仲間じゃないのか。」
「いや、いくらなんでも内の連中はそこまでやるとは思えない。そこまで落ちてはいない。」
「どうせ誰かを雇ってやらせたんだろう。それに奴等は拳銃を持っていた。ヤクザじゃないかな?ところで、俺はその連中の後をつけて住んでいるところを確かめた。」
「本当か。」
急に声を潜め、
「良くやった。よし、その場所を教えろ。いや、これから会おう。詳しく状況を聞きたい。どこにする。」
「そうだな、新宿がいい。学生時代、よく行った例の店ではどうだ。店の名前は言えないがな。ハハハハ…」
榊原は笑いながら言った。
「その言い方は、まるで、盗聴を気にしているみたいだな。」
「お前の話だと、警視庁の仲間さえ信じられないみたいじゃないか。」
「この電話は大丈夫だ。朝必ずチェックしている。それでは1時間後に。」
榊原が電話お置くと、斜め前にいる佐伯の目が点になっているのが分かった。まったく分かりやすい男である。聞き耳を立てなくとも、榊原は興奮して大きな声を張り上げていたのだから、すべて聞こえたはずだ。榊原はちらりと佐伯係長を一瞥し声を掛けた。
「ちょっと出てきます。」
と言って、にこりと笑いかけたが、すぐに険しい顔に戻って席をたった。
佐伯係長の顔は青ざめていた。先日、駒田捜査四課長が主催した秘密ミーティングのおり、幸子、晴美親子の名前も、秘密のDVDの存在も聞いていたからだ。その晴美が失踪し、その晴美の関係者と思われる男が誰かに襲われたたらしい。まして榊原は相手に「内の連中はそこまでやるとは思えない。」と言っている。
佐伯は榊原の意見に賛成だった。そして呟いた。「俺達だって、そこまで、落ちてはいない。」
佐伯はしかたなく受話器を取り上げた。
「何だと、そんな馬鹿な。おい、坂本と石川を呼べ。」
駒田課長は、佐伯が報告すると血相を変えて怒鳴った。駆け付けて来たのは石川警部だけで、坂本警部は出かけ
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