暁 ~小説投稿サイト~
シンクロニシティ10
第十二章
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筋肉の塊のような40がらみの男だ。
 晴美は恐怖に体ががたがたと震え出した。車は首都高に上がってゆく。若い男がポケットから黒い袋を取り出すと、晴美の顔にすっぽりと被せた。

 どこをどう走ったのか全く分からない。1時間ほど走って、車は停車した。ガラガラというシャッターの閉まる音が止んで、晴海は車の外に連れ出された。そこはガレージの中なのだろう。明かりが厚い布地をとおして感じられる。
 ギーという音とともに床が振動している。しばらくして振動が止ると、二人の男に導かれ晴美は歩を進めた。そして足先が宙を泳いのだ。恐怖にキャっと声をあげるが、階段だとすぐに気付いた。二人の男が下がって行くのを感じたからだ。地下室になっているようだ。
「ここはどこなの。いったい私に何をしようというの。」
晴美の声は恐怖に打ち震えている。右側の太った男が答えた。
「何もしない。静かにしていればいいんだ。」
階段を降りきると、被らされていた黒い袋が取られた。晴海は部屋の内部を見回した。そこは20畳ほどの広さがあり、薄汚れた大きな工作台が一つ、それに見たこともない機械類が散在し、隅にはダンボール箱が山済みにされている。
 そして晴美を驚かせたのはまるで牢屋としか思えない部屋が三つも並んでいることだった。小窓が開いているがそこには鉄格子がはめ込まれている。若い男が真中の部屋の開けると、太った男が晴美を中へ突き飛ばした。そして扉が閉められ、鍵の閉まるカチッとい音がした。
 部屋に明かりはない。地下室の明かりが小窓から洩れてくるだけだ。まるで診療台のようなベッドに毛布が畳まれて置いてある。その脇に小さな穴が開いており、そこから異臭が漂う。それは便器のようだ。
晴美はベッドに倒れ込みしくしくと泣いた。

 石田に晴美失踪が伝えられたのは翌日である。新宿のビジネスホテルの一室で、石田は榊原の緊迫した声を聞いて、思わず息を飲んだ。一昨日の襲撃に続いて、今度は、晴美が失踪したという。この二つの事件に関連があるのだろうか。
「幸子さんが言っていたんだが、晴美さんは、昔は何度も無断外泊をしたが、最近は全くなかったそうだ。それに、昨日、晴美さんと一緒だった友人が、今日、会う約束をしていたんだが、すっぽかされたらしい。携帯もつながらなくなっている。」
「榊原、例の昔のボーイフレンドがいただろう。しつこく付きまとっていたらしいが、そいつはどうなんだ。」
「ああ、さっそく当たってみたが、野郎、少年院送りになっていやがった。洋介君に続いて晴美さんまでいなくなった。いったいどうなっているんだ。」
「実はな、榊原、俺も二日前、中野の路上で二人の男に襲われた。そいつらは、俺のマンションの鍵を持っていた。薄気味悪いので鍵を交換中だ。」
石田は、二日前に襲われた
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