第十二章
[3/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
っていった。二人の男が路上に放り出されている。石田は携帯で110番をした後、二人の男を見張った。一人が起き上がろうとするのを、石田は顔を殴り付けまたしても気絶させた。
しかし、パトカーを待つ間に石田の気が変わった。相当に酔っていたし、全てが面倒になっていたのだ。眠気の方が勝った。一刻も早くシャワーを浴び寝床に飛び込みたかった。だから二人を置き去りにして、その場を去ろうとした。
ふと見ると、一人の男の手に黒光りするものが握られており、それが上着の端から覗いていた。石田は屈み込むとその男の手から黒光りするものをもぎ取った。拳銃である。石田は昔からガンファンである。モデルガンを幾つも持っている。石田はその拳銃をベルトに差し込むと、千鳥足でその場を立ち去った。
家に帰ると、冷たいシャワーを浴びた。アルコールが飛ばされ冷静になるに従い、どうもここが安全ではないように思えてきた。奴等は強盗ではない。何日か前にも、黒のワゴン車をマンションの近くで見かけたことを思い出したのである。
石田は浴室を出ると部屋の電気を全て消した。十分後、必要な着替えや小物を入れたリックを背負い、外に出るとドアの鍵をかけた。拳銃はベルトに刺している。そしてビルの非常階段の下に潜んだ。何故かわくわくしている。
それからおよそ20分後、エレベータの音が聞こえ、石田の住む5階で止まった。またしても二人の男が石田の部屋の前に立った。さっきの男達だ。一人がキーを錠前に差し込んだ。石田は「やはり」と呟いた。
男達が部屋に入ると、石田は非常階段を駆け下りた。間違いなくあの黒のワゴン車が下に控えているはずだ。二人が、部屋に石田がいないことに気付き降りてくる前に、そのワゴン車を何とかしなければならない。
案の定、黒いワゴン車がそこにあった。その時、向かいのマンションの前にタクシーが止まった。若い女がタクシーから降り立つところだ。石田はワゴン車の運転手に気付かれぬよう迂回してタクシーの後部座席に滑り込んだ。
「あの黒のワゴン車の後をつけてもらいたい。謝礼ははずむ。」
若い運転手はにこりとして頷いた。見るとマンションから二人の男が出てくるところだ。二人を収容すると黒のバンは発車した。
タクシーはすぐに発車せず時間差をもってゆっくりと滑り出した。
翌日の午後10時過ぎ、晴美は、自宅50m程手前に止っていたセドリックの後部座席にいきなり押し込められた。叫び声もあげる間もないほど、それは手際良くなされた。そうとうに手馴れた男達のようだ。
二人の男に両側から押さえつけられ、晴海は身動きもとれない。
「あんたたち、誰なの。私をどうしようというの。」
叫ぶように言うが、返事はない。二人の男は顔を隠そうともしていない。冷酷そうな目をした若い男と、分厚い
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ