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DQ1長編小説―ハルカ・クロニクル
Chapter-0 序章
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下ろされる。それは女の足をかすめた。女は転倒した。
(ああ、このままじゃ私…!そうよ、あなたが言っていた通り…!)
女はハルカをくるんでいた毛布に手紙をしのばせた。
(お願い!)
女はキメラの翼を握り締める。その時、女は魔物から一撃を喰らう。
(お願い、ラダトームへ!)
女がキメラの翼を頬利投げた直後、意識を失った。

ラダトーム町。
こちらは魔物の襲来は全く無く、とりあえずは平穏に暮らしていた。恐怖には怯えてはいたが。
「あれ?」
男は町の入り口で血を流して倒れている女性を見た。
「おい!大丈夫か!」
「……私は……いいから、この子を、お願い、助けて……」
女性は意識を一瞬だけ取り戻し、こう呟いた後、再び倒れこんだ。
もう、女性に息は無かった。
町の人は顔を見合わせた。そして竜王軍の恐ろしさを知る。
「せめてこの赤ん坊、ハルカという男の子は元気でいないと。…誰か、この赤ん坊を育ててくれる人は居らぬか!」
「…私が!」すぐさま一人の女性が手を上げた。若い女性。「私が責任を持って育てますわ!」
町の人は肯いた。断る要素は特に無かった。若い女性は子供好き。少しの間だけだが、家庭教師もやっていた。信頼度は決して低くは無い。
「じゃあ、頼んだぞ」「はい」
「この女性は手厚く葬ってやれ!」「はっ!」
こうしてハルカは一人の女性によって、おおよそ14年間、育てられたのである。

アレフガルド暦398年7月、ルビーの月。
ハルカが14歳のときだった。
「母さん!…しっかりして!…もうすぐ医者が来るから!」
「ハルカ…私は…もう長くないわ…。ねえ、これを持ってて…」
ハルカの養母はハルカに一冊の本を手渡す。ベッドの下に隠し持っていたものだった。
「何?この本…表紙に“ダイアリー”って書いてあるけど」
養母の容態が急変する。苦しそうにこう呟いた。
「…あなたの運命を握るものよ。いつか、解る時がくるから」
「母さん!母さん!?」
養母は苦しみが消えた後、眠るようにして目を閉じた。
「母さん!!…そんな……」
ハルカは生みの親も、育ても親も失ったことを悟った。

その直後、ハルカはラダトーム戦士団に入団し、ラダトーム城に住み込みで働くことになった。
生みの親が遺してくれた手紙と、育ての親が遺してくれた一冊の本を持って。
その暮らしは決して楽ではなかったが、必死で働いた。
(いつか僕は……旅立つことになるんだろうか?)
ハルカは常にそう考えていた。
そして、その予感は、2年後のハルカの誕生日、ペリドットの月の最初の日、8月1日に当たる事になる…。

―――
*解説
暦は1年365日(閏年は366日)と、こちらでもお馴染み。
ただし、この世界には別名がある。
1月…ガーネットの月
2月…
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