GGO編
百十九話 これからもよろしく
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…えっ?」
「言ったよね。僕、ずっと最強になりたかった。あの時には、もうそう思うようになってたんだよ。GGOを始めた時から、そう思ってたしね……五月の終わりに、遠藤達があの話を全校に言いふらした時、僕もその事件の話聞いてた。僕が朝田さんにあの時話しかけた本当の理由はね……?」
──朝田さんが、銃で人を殺した事が有るって聞いたからなんだよ──
「…………ぇ」
口から洩れた掠れた声が自分の物であると気が付くまでに、少し時間がかかった。と言うよりも、自分自身がその理解を拒んだのだ。
掠れた声のまま、自分でも殆ど意識しないままに詩乃は言葉を紡ぐ。
「それって……」
「“凄い、本物のハンドガンで、本物の悪者を殺した事のある日本中何処を探したって朝田さんしかいない。だから朝田さんには本物の力が有る”」
「っ……」
恭二の言葉は、まるで彼では無い別の人物が発しているかのように、しかし間違いなく彼自身の物として彼の口から発された。
「きっと僕は、今日朝田さんを襲う事をやめなかったら、平気でこういう事を口にしてたと思うよ」
「…………」
茫然とする詩乃に、恭二は表情の消えた顔のままで口から言葉を発し続ける。
「昨日、遠藤達が来た時、近くに居たのも偶然じゃない。ずっと付けてたんだ。登校の時も、下校の時も、朝田さんの事、毎日、毎日ね……死銃の武器に五十四式を選んだのも、その為だよ。朝田さんに、憧れてたからね……」
最後の言葉は自らを馬鹿にするような笑みを含んだものだった。
「……そんなの、って……」
「分かったでしょ?朝田さん。僕は、君が一番嫌うような事を、ずっとし続けて来たんだ。朝田さんと接してきた今までの僕は……全部、嘘なんだよ。だから、もう、僕に関わらない方が良いよ。大丈夫、すぐ、居なくなるからさ。後は、忘れてくれれば良い」
そうして、恭二は今度こそ完全に黙り込んだ。最後だけははっきりとは言及しなかったものの、明らかに自らの死を表す言葉を最後にして、だ。
「…………」
その終わりに二の句が継げなくなると同時に、詩乃は“駄目だ”と理解した。
自分の事は、まだ良い。確かに、此処までの話の中で最もショックの大きい内容では有ったが、それでもそれを正面から詩乃に話したと言う事は、恐らくは恭二はもうそのつもりは無いのだろう。少なくとも、詩乃自身はそう思いた方。
寧ろ問題なのは、説得云々以前に、罪の意識に押しつぶされそうになっている恭二自身から、生きる意志その物が完全に欠乏してしまっている事だ。これでは仮に彼をこのまま出頭させたとしても、必ずまた自殺を計るだろう。
今の彼は、まるで見えない何かが彼を誘おうとしているかのように、死への一本道を突き進もうとしている。
「……っ」
と、不意に、詩乃の頭の中に
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