GGO編
百十九話 これからもよろしく
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女にとっても見慣れた、模試の結果を表したもの。しかし其処に表記された数字達は、どれもこれもがいっそ清々しいほどに燦々たる結果を表していた。
「これ……」
「言った通りだよ。僕は、模試でも受験でも上手く行って無い。それに、親にも嘘ばっかり言って有るんだ。コピー用紙で嘘の模試の結果を作って見せて、アミュスフィアでは遠隔指導受けてるって言って有るんだ……これを見たらきっと、父さんも母さんも、僕を見捨てるよ。ショウイチ兄さんにしたのと同じようにね……」
「そんな、そんな事……!」
無い。と言おうとして、詩乃は気が付く。残念ながら自分は、親に期待されると言う感覚も、親に見捨てられると言う感覚も知らない。彼を説得しようと口から手拍子で言葉を紡いでも、きっとそれらを知らない自分の言葉には彼を変えられるだけの重さは宿らない。口に出すならば、自分自身の言葉で無ければならないだろう。
「私は、でも……私は、新川君に死んでほしくなんか無い……!たとえ君が私に何をしようとしてたんだとしても、君が気付けたなら、まだ私は、君を信じていられる。君だって、きっと今からだって変われるよ!それに…………さっき、言ったじゃない、これからもよろしくって……言ったばっかりなのに……!」
そんな詩乃の言葉に新川は少しだけ嬉しそうに微笑んだ顔をした。
「ありがとう……でも、でもね、朝田さん、僕には、朝田さんからそんな言葉、かけてもらえる資格なんて無いんだよ……」
「え……?」
言葉の意味を、少しだけ遅れて脳が理解する。その間に、新川は慈しむような、あるいは何処憐れむような、そしてたとえこもっていたのがその何れであったとしても、深く深く悲しんでいるだろう瞳で、詩乃を見据えていた。
「朝田さん、僕と朝田さんが初めて会った時、覚えてる?」
「う、うん……図書館で、私が……」
詩乃と恭二が初めて出会ったのは、六月、近所の区立図書館での事だった。トラウマを克服する為の自分なりの努力のつもりで、写真程度ならばある程度は耐えられるようになっていた事を理由に、“世界の銃器”と言うタイトルの本を見ていたのだが、それでも流石に黒星のページは、十秒程見た時点で耐えられなくなり慌てて本を閉じた時、後ろから恭二が話しかけて来たのだ。
「あれ、さ。朝田さんは、偶然だと思ってるよね?」
「ど、どう言う意味……?」
質問の意味が分からず、聞き返した詩乃に、恭二は苦笑するようにして答えた。
「あの時はね、僕、初めから朝田さんに話しかけるつもりであの図書館に居たんだよ。朝田さんに、興味が有ったから」
「興味って……」
既に先程までの悲しむような表情を無くした新川は、ただ淡々と詩乃に向かって語る。
「僕が朝田さんに話しかけたのはね……あの事件の話を聞いたからなんだよ」
「…
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