GGO編
百十九話 これからもよろしく
[5/11]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
なくなった。
黙りこくった恭二を追い詰めるように、詩乃は一歩前へ踏み出して再度問う。
「答えて。新川君、何をしてるの?……ううん。何を“しようとしてるの”?」
「っ……」
更に踏み込んでくる詩乃に、恭二は一瞬歯噛みした後……ポケットから取り出した“ソレ”を、詩乃に向けた。
「っ……!」
「近寄るな」
静かな声で、新川は言った。
「これは、『無針高圧注射器』って言うんだ。中身は『サクシニルコリン』。これが体内に入ると全身の筋肉が弛緩して、心肺が止まる。僕はさっきまで、朝田さんが出会った“死銃”の片腕として、これで君を殺そうとしてた。今もそれは出来る。もしそれ以上近寄ったら……」
「私にその注射器を刺して殺すって言うつもり……?」
恭二が言い切るよりも前に……詩乃の言葉が、それを遮った。
「……やってみれば良いじゃない」
低い声でそう言いながら、詩乃は恭二に向けて一歩踏み込んだ。同時に、気圧されるように恭二の身体が一歩下がる。彼女の瞳は、真っ直ぐに彼の瞳を射抜いていた。
「手が震えてるよ、新川君」
「っ……」
更に一歩。
恭二が見ると、確かに、注射器を持った彼の手は細かく震えていた。
「例えそれがべレッタだったとしても、そのままじゃ私に当てられるか心配だね……」
「く、来るな……」
一歩。
精一杯の去勢を込めた言葉であった筈なのに、余りにも弱々しく漏れたその言葉に、恭二自身が驚いた。
「来て欲しくないなら……自分で何とかしたら良い……!」
「っ……!お願いだから来ないで……朝田さん……」
更に、一歩。制止するには余りに弱々しい言葉を無視した詩乃は、既に、恭二まで残り5メートルの距離まで近づいていた。
『もう、少しっ……!』
詩乃が内心そう思った、しかし、その時、遂に恭二が恐れていた行動に出た。
「…………」
「っ!だ、駄目っ!止めて新川君!」
注射器を自分の首へとあてがったのだ。其れはまるで拳銃の銃口を、自分の頭に押し付けるかのように。
「……ごめん、朝田さん」
「止めっ……!」
しかし止める間もなく、恭二は注射器の、恐らくは薬品放出用のボタンを押し込む……寸前だった。
「ふざっ……!」
突如、公園の草むらの影から何かが飛び出し。
「……けんな馬鹿やろうがぁ!!」
「ぐっ!?」
新川の手を思い切り殴って、その注射器を叩き落としたのだ。地面に落ちて乾いた音を立てたプラスチック製のそれを、影――涼人は飛び付くように取って、勢いで半コケして地面を滑る。
「いでぇ!また脛っ……!っけどこれで……!」
「あ、ちょっ!」
恭二が止める間もなく……涼人は注射器を公園の周囲
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ