暁 〜小説投稿サイト〜
SAO─戦士達の物語
GGO編
百十九話 これからもよろしく
[4/11]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
三時間半程前にも来た公園を、再び訪れていた。
木の下のベンチに座り込んで、携帯に何かを打ち込んでいる。彼以外の誰一人として覗き込む者の居ないそれの内容は、当然誰に分かる訳も無い物なのだが、敢えてそれを彼の視点から見た物として言うならば、それは、遺書だった。

自分が死ぬ理由と、自分の犯した罪。それによって裁きを受けるべきである事。迷惑を掛けた全ての人物たちへの謝罪。そして、自分の死をどうかしばらくは自分の学校を含めたあらゆる人物知られないように、特に、同級生の朝田詩乃にだけは絶対に伝わらないようにしてほしい事等が、其処にはつらつらと書かれていた。

「…………」
まさかこんな物を大嫌いだった親当てに書く事になろうとは、そんな事を思い苦笑して、彼は両親へこれまで育ててくれたことへの恩義も書いておこうかと考える。しかし……それを書くには聊か自分は彼等の汚点になりすぎただろう。そう思い、やめた。

と、ふと顔を上げた恭二の視界に、今はもう少なくなった公共用水道が映る。

『おにーちゃんありがとー!』

「……僕こそ、ありがとう」
つい数時間前、自分に笑顔を向けてくれた、きっと、自分を正気に戻してくれた最初のきっかけとなった少女に礼を言って、恭二は立ち上がる。
元々、歪んだ目的の為にポケットには幾らか金を持って来ていた。これを持って、山梨の山奥辺りまで行けば、大分他人への迷惑は少なく死ねるだろう。

「全く……」
まるで午前中までとは違う事を考えている自分に再び苦笑する。溜息を付いて、彼は再び歩き出した。

そうして公園を出て駅の方へと歩き出した、その時だった。

「新川君っ!」
「っ!?」
聞き慣れた声が、彼の後ろから響く。
一瞬驚きながらも、恭二は少し恐れながら、しかし反射的に振り向く。 其処には予想通りの人物が立っていた。

「朝田さん……」
「はぁ……っ、はぁ……っ」
全力疾走でもしていたかのように、詩乃は息切れを起こしていた。服は薄着で、この寒空ではどう考えても不釣り合い。防寒着を着る時間が無かったとでも言うようだ。
切れ切れの言葉を紡ぎながらも、詩乃は恭二を睨む。

「何……はぁ、してるの……」
「えっと……」
いきなりの事に驚きながらも、咄嗟に口から出任せを作り出す。

「いや、勿論家に帰ろうと思って……」
「なら……新川君の家逆方向でしょう」
ようやく息が整ってきたらしい彼女の鋭い突っ込みに、恭二は慌てたように返す。

「いや……その、その前に、参考書でも買って行こうかなって……」
「駅前の本屋さんも商店街の方も、もうとっくに閉まってるよ」
「ぎ、牛丼でも……」
「駅前の吉田屋ならこの前潰れたわよ」
「…………」
……二の句が告げ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ