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SAO─戦士達の物語
GGO編
百十九話 これからもよろしく
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詩乃は怒鳴った。

「何度も言わせないでよ……私は、新川君に死んで欲しくなんか無い。もう、無くなったり、壊れたりなんて沢山なの……!」
「でも……僕は、でも……」
攻め立てるような詩乃の言葉の嵐に、恭二は俯き、しかし言い返す事も出来ずに黙り込む。それを見て、流石に少し圧を掛け過ぎた事を察したのか、詩乃の次の言葉は直前と比べると大分柔らかな物だった。

「それに……新川君は、ちゃんと自分の間違いに気が付けたじゃない。もう君は、変わる為の入口には立ってるんだよ。後は、一歩踏み出すだけで良い」
「…………」
黙り込んだ新川に、詩乃は諭すように、柔らかい言葉で続けた。

「踏み出すのが難しいなら、背中を押してあげるから。私達の友達って関係が、今までが全部嘘だったなら……今から、また始めれば良いだけでしょう?だから……」
「…………」
そうして、詩乃は最後の言葉を紡いだ。

「もう一回、初めから……友達になろう?」
「…………」
俯いたまま、恭二は数秒間、黙り込んでいた。
しかし、やがてその顔を上げて、まっすぐに詩乃を見ると……先程までとは全く違う顔つきで、柔らかく微笑んだ。



「……やっぱり、朝田さんは凄いや……」
「そう?」
首をかしげて微笑んだ詩乃に、恭二ははにかむように笑う。何時もの、けれど過去に見たどの笑顔より優しく、明るい、彼の笑顔だった。

「……僕でも、まだ頑張れるかもって、気付かせてくれたもの……こんな、僕でも……」
「……うん。私も……あ、そうだ」
「?」
思いついたように空を見た詩乃に、恭二は首をかしげる。

「改めて、これからもよろしく、新川君」
そう言って詩乃が差し出した右手を見て、恭二は少しだけ硬直すると

「……うぁ……う……!」
「ち、ちょっと、なんで泣くのよ」
突然涙を流して俯きだし、詩乃は戸惑ったように問う。
その声に、泣きながら笑った恭二は、ブンブンと首を横に振る。

「な、何でも無いよ……こちらこそ、よろしく。朝田さん」
相変わらず泣いたままそう言って、恭二はゆっくりと目の前の手を、自分の手で握った。



「これにて、一件落着。だな」
彼等の後ろで、ニヤリと笑った青年が、冬空の下で、都心の光に負けず、うっすらと光る星空を眺めていた。


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