ALO編
epilogue 彼女の腕の中で2
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モカと別れて(有難いことにお子様は早く寝るために帰ってくれた)、一時間前にこの妖精の世界にログインしてもう何回その動作を繰り返したかを考えて、また溜め息。
今俺がいるのは、音楽妖精領内にある、アイテム預り所。
実に数か月ぶりとなる懐かしい場所の、NPCの預り係の前の椅子でそわそわとしている。
俺らしくない、といえば俺らしくないが、まあ仕方あるまい。
「最後の、チャンスだからな……」
今日の零時……それは、特別な時間だった。
エギルから聞いた、シークレットアップデート……『アルヴヘイムへの、《浮遊城アインクラッド》の実装』。あの伝説の城の復活、そして新実装される《ソードスキル》システムは多くのゲーマー達の魂に火をつけるだろうが、俺にとってはそれは別の意味合いを持つ。
それは、『SAO全データの統合』。
もしあの世界で存在した全てが実装されるのであれば、俺の引き継いだこの《破損アイテム》達が、元通りになるかもしれない。あの世界の、遠い過去の思い出の品達が、取り戻せるかもしれない。
誰もいない預り所。
あと、数秒。減速を始める世界。
街のBGMすらもが、俺の意識から消えていく。
続いて響く、アルヴヘイムの零時の鐘。
NPCへの定型文を叩き付けるように叫んで呼び出す、預りウィンドウ。
表示される、画面。
そこには。
「……っ……っっ……」
何も、無かった。
あの世界の思い出のアイテムはおろか、破損データの羅列さえ。
「くっ、くぁっ……」
喉から洩れる、一言では…いや、どんな文章でも言い表せない様な感情の苦悶。
その衝撃に、俺の視界が大きく歪んで崩れて。
「っ!!?」
突然眼前に表示されたメッセージに、目を見開いた。
◆
走っていた。
何も考えず、何も感じず、ただただ衝動に突き動かされて走っていた。
有難いことに、今の俺の体はこの世界で世話になった音楽妖精のものではなく影妖精のそれであり、その体や手足は俺の元の世界でのそれと完全に一致している。『SAOキャラデータ統合』によって引き継がれた俺のサブアカは、身体的扱いだけならプーカのそれより格段にしやすい。
『ルグルー回廊』を僅か一時間で駆け抜け、そのまま疾走を止めずに風妖精領、『古森』を目指す。
―――『風の啼く岬』で待つ
唐突に届いたメッセージの内容自体は、何の変哲もない呼び出しメッセージ。
問題は、その差出人だった。
「っ、はあっ! はあっ! はあっ! ……っ、来たぞっ!!!」
その夜の海が全面に広がる場所に息も絶え絶えに辿り着いたとき、前回に来たとき
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