第七話 〜前哨〜
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に振りほどいて逃げ出してやりたい。
『…うぅ…クッ…ッ!』
だが、僕にはできなかった。
僕は父さんの胸で泣いていた。
『なんで…ッ!なんで凱雲負けちゃうんだよ!彼奴らっ…彼奴らなんかに…ッ!くそっ!』
『…帯』
『なんでッ!なんでなんだよッ!!』
『…ッ!帯…ッ!』
『ッ…!?』
この際名一杯父さんの胸で泣こうと思った。
だが、その父さんに抱かれたまま止められた。
一瞬どういう事か理解できなくて素に戻る。
『…父さん?』
『すまない…ッ。父さんはお前に聞いてもらわなきゃいけない事があるんだ…ッ』
『…
』
こんな時に言わなきゃいけないことってなんだろ?
『…討伐部隊の案内役を…やってもらいたいんだ』
討伐部隊の…案内役?
…あいつが関係してるのかな。
『…洋班がまた何か言ったの?』
『…ッ』
僕を抱き締める強さが増した。
…多分また辛い立場にいるのかな。
『…父さんが情けないばっかりに…お前をひとじ』
『父さん』
『ッ』
『…父さんも大変なんだよね?』
『…』
父さんの背中を軽く叩く。
すると父さんの抱き締める力が弱まる。
そして顔が見えるくらいの距離に離れる。
見合わせた父さんの顔は…今にも泣きそうな情けない顔をしていた。
…僕以上に父さんも辛いんだね。
僕は頑張って笑顔を作ってみせた。
『僕案内役やるよ』
『…しかし』
『大丈夫。何があっても頑張るよ』
『…』
『だって…父さんの息子だもん』
『…ッ』
急に体を引き寄せられて抱き締められる。
直前に見えた父さんの表情は罪悪感で一杯だった。
…僕、今回は覚悟決めなきゃいけないのかな。
『…すまないッ…すまない…ッ!』
父さんは声を押し殺しながら謝罪の言葉をかけてくる。
…どんな事になってるか知らないけど、もし戻ってこられたら今度こそ親孝行してあげよ。
さっきまであんなにも涙が出てきた目からは自然と涙は引いていた。
父さん…僕頑張るから。
そしてその日の夕方僕は派兵団の中に紛れて関を後にした。
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