ALO編
episode6 決戦、空飛ぶ狩人
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最後の一言にモモカの顔が泣きそうに歪んで……そのまま牛車の中に入って待機姿勢を取った。ログアウトした証拠だ。後はこの《天牛車》を、彼女が完全にログアウトするまで守りきればいい。……恐らくこの大群相手に俺一人では、勝ち目はないだろう。
《索敵》で分かる敵の数は、なんと三十に届こうかという数だった。獲物を待ち受けるかのように半円形に広がっていたその陣形から考えて、間違いなくPKギルド。その半円は既にその端を閉じて、俺達を包囲しつつある。
《天牛車》の御者をモモカから代わっていたブロッサムは俺がこれからすることを良く分かってくれているようで、《天牛車》は深い針葉樹林の前に降り立ち、そのまま中へと入っていく。さすがノーム領、この雪原は真っ直ぐで細長い針葉樹林が多くて助かるぜ。
そこまでの操作を見届けて、ブロッサムにも声をかける。
「……ブロッサムも、すぐに落ちてくれ。いいな?」
『いやです』
「……オイ」
が、返答は予想外のものだった。
……テメー、俺とモモカのやりとり見てんだろうが。
イライラといいかえそうと俺が口を開く前に、ブロッサムが素早くウィンドウを俺に突き付ける。
『私の最終セーブポイントは鍛冶妖精領です。このまま死んで領地に「死に戻り」すれば今より早く辿り着くことが出来ます。寧ろ今は好機です。高価なアイテムを多数持つ、貴方が先にログアウトするべきかと存じ上げます』
「……ブロッサムのアイテムも、手作りの作品が多いだろ。いらないなんてふざけたこと言うなよ」
『確かに自分で言うのは憚られますが、私の持つ製作アイテムも安価な素材では作れない高級品です。ですがそれを加味したとしても、今のこの行進とどちらが大切かという問題です。私はこちらの方が重要だと考えています。もし私が死に戻りしても、それはそれで目的は果たされます』
打ち込まれるウィンドウに、ぐ、と言葉が詰まる。細い切れ長の目が、「これ以上の反論は認めません」とばかりに更に細められる。確かに今の行軍は、領主達の行軍との兼ね合いを考えれば、できる限り早いほうが望ましい。少なくとも、彼らがアルンに到着して戦端を開く前に、《竜鎧》を届けなくてはいけない。にしても、俺一切それ説明していないはずなんだが、なぜそれを知っている。
いい反論もなく、しかし頷くわけにもいかず、睨み合う。勿論、俺は落ちる気はない。
そして。
「……待った。もう手遅れだな」
『の、様ですね。既に敵の羽音が聞こえます。この羽音は、ノームとケットシー、ということは』
「ああ」
時間切れの合図が、とうとう二人の耳に響いた。二種類多数の羽音は、間違いないだろう、ここら一帯を縄張りにする、PK集団、『|空飛ぶ狩人
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