十八 告別
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も暗部総隊長には思えない、普通の子どもの影である。それでも彼がこの里で最も強いのだと理解しているからこそ、横島はナルトの心の支えになりたかった。
どれだけ強くともやはりナルトは子どもなのだ。どんな規格外な強さを持っていても完璧な人間などいないのだと、自分自身を顧みて思った。
「………急にどうしたんだ」
「いや、別に……」
誤魔化すように横島は笑ったが、ナルトから滲み出る無言の圧力に促される。
こちらに少し振り向いて尋ねるナルト。その顔の赤さが夕陽に照らされているだけではない事に横島は気づかないふりをして口を開く。照れ臭いのだろう。子どもらしいその反応に思わず喉の奥が鳴った。
「…たいした事ないんだけどさ。ハヤテさんに、お前と何の関係があるのかって聞かれたから」
月代のほうな、という言葉にナルトはきょとりと目を瞬かせる。
頭を掻きながら空を見上げるとその赤が目について、横島は思わず感慨深げに呟いた。
「…どこでも空は一緒やなぁ…」
その独り言のような小さき声に、大袈裟過ぎる程ナルトは大きく肩を揺らす。
「……――――――元の世界に帰りたいのか?」
「え………」
突然横島の手が離れたブランコは、寄せては返す波のように反復し、やがて止まった。
そのブランコの上に座っているナルトは横島の答えを待っているようだ。振り返る素振りも見せない小柄な背中が彼をじっと見つめている。問い掛けられたその言葉の意味を反芻して横島は愕然とした。
そういえば一度たりとも戻りたいと、帰りたいと思わなかった。
(どうして)
思わなかったのだろう。急激に湧き上がる疑問に、横島は胸をぐっと拳で握り締めた。
「………――――――お前は、俺に、帰ってほしいんか」
次いで口から無意識に飛び出した言葉は、思っていた内容とは真逆だった。何も考えずに紡いだそれに横島自身も困惑する。ナルトのほうも酷く驚いた様子で眼を見開かせていた。
「…………………………」
無言がその場を支配する。
夕風が公園をぐるり囲んだ木立を吹き抜けた。その風は横島とナルトの頬をやわらかく撫でていく。カァという鴉の鳴声で我に返った二人は弾かれたようにブランコから離れた。
「………帰るか」
何の考えも無く口にした横島の言葉に、ナルトが反応する。ハヤテさんも心配するだろうしと続けようと思った言葉は、ナルトの激語によって遮られた。
「そうだ、早く帰れ。お前の世界に」
小声だが激しさの込められた一言に横島は動揺する。顔を背け、つき放すような物言いでナルトは続けた。
「……――色々と世話になった。礼を言う…もう充分だ。だからお前は」
ざぁっと二人の間を夕風が駆け
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