十八 告別
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ない。背中を見せる事は命取りに繋がるからだ。だから多少気を許す相手にも本能が身体を動かし、無意識にクナイを突き付けてしまう。
顎下の冷たい切っ先に冷や汗を掻きながらも、まるで猫が警戒してるみたいだなと横島は感傷にひたった。
「なんもしねえって。ただ背中を押してやろうと思って」
「…………背中を、押す?」
訝しげにクナイをおさめるナルトにほっと息をつき、横島は改めて彼の背中に手を伸ばす。
キイと一際大きく揺れたブランコ。ブランコを吊るす金具に慌ててしがみ付いたナルトは目を丸くしている。キイッと反動で返ってきたブランコに向かって、横島はもう一度力を入れた。
「ブランコの楽しさってのは一人で乗る事じゃなくて誰かがその背中を押してやる事だと思うんだよな」
振り子のように大きく、ブランコは夕焼け空へ跳ねる。しっかりと金具を手で握り締めているナルトは、ただただ前方に目を向けていた。
「……別に、楽しくない」
「そうだなぁ。いつも木から木へ跳び移る奴にはこんなの楽しくないかもなあ」
木から木へ跳び移るのってやっぱ難しいんかと軽い口調で横島は話し掛ける。ブランコが再び大きく弧を描いた。
「でもさ…………こう、ブランコで高いとこまで上がるとさ…空に近くなるだろ」
戻って来るブランコを目で追いながら、彼は薄く笑う。
「子どもの時、ブランコに乗るとよく思ったんだ。太陽とか月とか、そういったモノに近くなれるって。たぶん、天に手を伸ばしたかったんかな…なんか強くなれる気がして」
手を空に翳す。黄昏時の太陽が横島の掌を赤く照らした。
実のところ横島はある言葉がずっと心に引っ掛かっていた。それはハヤテと初めて会話した際の、「総隊長とどのようなご関係なのですか?」という設問だった。
横島は月代――ナルトにとって何なのか。友達?仲間?それとも……?答えが見つからぬまま悶々としていた横島に、新たな問題が提起される。
それはナルトを崖に突き落とした大柄な男の「他人は口出しするんじゃない」という一言。思わず「他人じゃねぇ!!!!」と否定したが内心では断言できなかった。その上間髪容れずアパートを襲撃された事で湧き上がった疑問。
陰口に暴言や暴行、罵声に投石…数え上げれば切りが無い仕打ちを受けている子どもに何をしてやれるのか?過酷な状況にいながら頑なに助けを拒む子に自分は何が出来るのか?
煩悶する横島を示唆したのは再びハヤテが言った言葉だった。
[傍にいる]・[見守る]…この二つの単語は横島の考え倦んでいた問題に一点の光を見出した。
「お前はもう天に手が届いてるような強者だと思うけど、その背中を押してやれる奴に俺はなりたいんや」
はたと、地に映るナルトの影を見つめる。その小さな影はとて
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