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をあっさり質問する部下は、しかし今は頼もしい。オーベルシュタインは首を振った。
「では、まさか告白さえしていないとか。……そもそも、話したことはあるんですか」
今度は小さく肯いた。
「何度か言葉を交わしたことはある」
そう言って少し間を置いてから、消え入りそうな声で説明を始めた。
「犬の散歩コースにある公園で、時折顔を合わせるのだ。彼女はダックスフントを連れていて、犬のことで少し話をすることがある。……それだけの関係だ」
再び目を伏せて寂しげな表情をする上官を見ていると、励ましてやりたいという気分になる。これも性分というものだろう。
「でも閣下。他にも大勢、公園を通る人間がいるのに、その女性は閣下と話をするんですよね。まったく脈なしとは言えないのではないですか」
そうだろうかと、オーベルシュタインは自信なげに呟いた。
「可憐で明るい女性だ。もしかすると、誰とでも言葉を交わしているのかもしれぬ」
そう言いながらその女性を思い浮かべてしまったのか、青白い頬にうっすらと朱が差した。上官のあまりにも純粋な反応が可愛らしく、フェルナーは込み上げる笑いを押さえるのに必死だった。
「そんなに自信がないなら、いっそ権力でご自分のものになさればよろしいでしょう」
無論これはフェルナーの軽口であった。自然体のまま自分を「笑い」という試練の場に連れ出した上官への、ささやかな復讐である。
「そのような非人道的なことができるか」
上官の顔はあくまで真剣で、フェルナーは耐え切れなくなって、ぷっと吹き出した。
「……閣下がそれを言いますか」
ひとしきり笑った後、真顔に戻って改めて思案を巡らす。
「それにしても、伝えてみる価値はありますよ。何しろ閣下ほどの方に想いを寄せられて、断る女性などいないでしょうから」
フェルナーの提案に、オーベルシュタインは激しく首を振った。
「それが嫌なのだ」
先ほどまで頼りなげに泳いでいた視線が、真っ直ぐにフェルナーを見据える。
「地位や財産を目的に付き合おうなどと思われるのは心外だ。私個人を見てほしいし、私に好意を持ってもらわねば意味がない」
日頃は他人からの評価など気にも留めない癖にと、フェルナーに皮肉られると、「好きな相手には好いてもらいたいと思うのが道理だろう」と恥ずかしげもなく答え、さらに部下を笑わせた。
「とはいえ、地位や財産もひっくるめて閣下という存在が成り立っているわけで、切り離して考えるのは容易ではありません。初めは帝国元帥という地位に惹かれたとしても、その後少しずつ互いに理解し合っていかれたらよろしいのではないですか」
そういうものかと、オーベルシュタインはゆっくりと肯いた。何しろ権謀術数から離れた探り合い、特に女心などには縁のない彼である。自分よりは遥かに経験豊富そうな部下の言に納得するしか
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