十七 感謝のことば
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ている。そうして横島に見限られるのをどこか怖がっている自分に戸惑った。
狐面をつける。途端、その場の空気が一気に冷やかなものになった。
面の奥から蒼い瞳を覘かせ、ナルトはこれからの筋道を脳裏にて立て直し始める。
口寄せしたガマブン太との激闘の末、チャクラ切れで入院というのがナルトの筋書きである。表の下忍は三日三晩眠り続け、本試験の前日に目覚める予定だ。そこで影分身に眠り続けさせ、自身は暗部任務を片付けるのが一番得策だと考えた。
けれどただでさえ忙しい身であるナルトに、どうしても暗部任務以外に外せない用事が出来た。明日時間をつくるため今夜は頑張らないと、と気合いを入れる。
(……明日は…掃除、しなくちゃなんないからな)
横島と一緒に、と心の中で呟いて、ナルトは割れた窓から外へ飛び出した。
ふっと意識が浮上する。目覚めると辺りは既に真っ暗だった。
(長い間眠ってたようですね…)
眠る前まで窓から射し込んでいた光も今は無い。屋敷を囲む森も薄暗く、僅かにほーほーと梟の鳴声が聞こえてくる。
夕食時だろうか。空腹を告げる自身の身体に苦笑し、同時にいつもなら料理を運んで来てくれる青年の姿がない事に首を傾げる。
気だるい身体をのそりと起こして、ハヤテは台所へ向かった。
寝室と同じく闇に包まれた台所の灯を灯した途端、テーブルで顔を伏せている人物に驚く。
「ごほ…、どうしたんですか?」
両腕に顔を埋めて伏せている青年――横島に話し掛けるが、彼は身動ぎひとつしない。
眠っているのだろうかとハヤテが思っていると、ぐすっと鼻を啜るような音がした。
「…泣いて、いるんですか」
「……………」
無言で伏せる彼の腕から小さな嗚咽が漏れる。ハヤテは黙って横島の真向かいの椅子に腰掛けた。
「…………たとえば、さ…」
くぐもった声が台所の闇に吸い込まれていく。天井にぶら下がる灯がぼんやりと二人の影を作り上げた。
「ずっと虐められている奴がいるんだ。何もしてないのに、まわりから酷い仕打ちを何度も受けている。……けどそいつはその仕打ちを当然の事だと思っているんだ。だから、いくら手を差し伸べても拒否してくる………―――――関わるなって拒絶するんだ」
ようやく歩み寄った、などと喜んでいたのが馬鹿みたいだと横島は思う。結局ナルトの重荷にしかならず彼に泣き言ひとつ言わす事すら出来ない。
「………俺は何が出来る?そんな奴に…。何をしてやれる?」
懇願するように横島は呟く。
曖昧な比喩を用いたのは、ハヤテがナルトをどう思っているか解らなかったからだ。加えて、ナルト本人に他言しないでくれと頼まれた事もあるが、なにより反応が怖かった。
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