十七 感謝のことば
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その原因は言わずもがな、三代目火影の記憶だろう。
ナルトは横島の記憶を見たため彼の心情が手にとるようにわかる。けれど横島はナルトの記憶ではなく三代目火影の記憶を見た。そのためナルトの心情が横島にわかるはずもなく、逆に火影の記憶を見たために火影老人の心情を理解している。
つまり三代目火影の、ナルトを庇護したいという彼の意思を受け継いでしまったということ。故に横島は火影の記憶に引き摺られ、ナルトを守りたい思いが強くなっているのだ。
加えて自己不信と劣等感がその思いを更に駆り立てている。
(もっと自信を持ってもいいだろうに…優れた才能の持ち主だと思うし、それ以上にどこか憎めない人柄だ)
だから彼のまわりに人が集まるんだろうと、ナルトは横島の記憶を思い浮かべて思った。
横島は何気に天才肌である。霊能力も土壇場で開化し、さほど努力しなくても新たな力を手に入れ、努力した際には実力が急激に上がる。
日常生活においてもそうだ。父母の血故か商才に恵まれ、練習したわけでもないのにライフルを使いこなし、その場で車やボートといった乗り物を運転し、水道管の修理といった器用な事も出来て、歌も上手く、ミニ四駆やゲームといった遊びにも才覚がある。つまり演技がそういった彼の長所を全て覆い隠していたのだ。
結局横島は根本的なところは何も変わっていない。女好きで馬鹿なふりをし、妄想癖がある…そういったところをごっそりと無くしただけで、あとは演技していた[横島忠夫]と全く同じ―――性根の優しい青年なのだ――――本人が気づいていないだけで。
暗部服を身に纏い、ナルトは割れた窓から空を見上げた。窓枠に残るガラスの破片がキラリと光る。
物を修繕する術などナルトは持ち合わせていない。忍術は錬金術とは違う。
初めて横島がこの家で就寝したあの日、割れた窓を気にしているようだったから幻術を掛けた。人間の脳に直接働きかけ、あたかも割れていないように錯覚させる術。それはもう一度同じような衝撃を与えれば簡単に破られる。
術が消えたため窓が何者かに打ち壊された事はとうに察していた。また投石かと思っていたのでさほど気にはしていなかったが。
ナルトがアパートに早々戻れたのは、影分身と入れ替わったからだ。暗部任務がラストスパートとばかりにここ三日間ぎっしり詰まっている。それに屋敷へ無理やり帰らせてしまった横島の事が気にかかったからというのと、直感が早く帰れと囁いたためである。
当たってほしくない勘が当たり、実のところナルトは不安だった。横島がこのような暴挙に辟易してナルトに見切りをつけるんじゃないかと、ナルトと共にいる生活に嫌気が差して帰ってしまうのではないかと、らしくもなく内心狼狽していた。
黙々と破片を拾い続ける彼の姿を見て、胸が熱くなったのを覚え
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